富裕層向けサービスとして活躍の場が限られていたインテリアコーディネーター。そんなプロの家具選びのスキルを顧客情報のデジタル化や部屋・家具の3D画像化によって1万円台で提供し、新市場の形成を狙うのが家具ECサイト事業のコシック(東京・渋谷)だ。

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 コシックは単に家具を販売するのではなく、利用者から部屋のインテリアコーディネートを丸ごと請け負うのが特徴。利用者は会員登録後に部屋の広さや間取り、ライフスタイル、部屋の好みなどを入力する。その情報に基づいて、コシックに参加するインテリアコーディネーターがコシックの商品データベースから適した家具を選び、部屋のコーディネートを提案する。

 創業者のコシックの武藤諒俊CEO(最高経営責任者)は元々、引っ越し好き。これまでに8回引っ越したことがある。その経験から、家具選びに3つの課題を感じていた。1つ目が色や素材など、インテリア同士の相性も含めて理想の部屋をつくる上での家具選びの難しさ。2つ目は探すことの難しさ。幅広いブランドの家具を扱う店舗やECサイトは少ないため、欲しい家具がどこで売っているかが分かりにくい。そして3つ目が購入前に試せない点。洋服であれば試着して、購入前にサイズなどを確認できるが家具では難しい。

 武藤氏はネットを通じたプロによる家具選び、部屋と家具を3D画像化する独自技術、そして商品を購入できるECを組み合わせることでこの3つの課題解決をすることを目指した。そうしたサービスであれば、家具選びに悩む顧客に支持されると考えた。

 提案段階では実際の家具を画像化し、利用者の部屋の間取りに合わせて配置した3D画像で提案する。実際の部屋に極力近づけるために、家具を3Dでモデリングする技術を開発した。「これは他の会社には作れない。技術優位性になっている」と武藤氏は胸を張る。修正は1回まで無料で請け負う。これなら購入前に完成した部屋をイメージしやすい。提案された家具を購入して配置すれば、画像通りの部屋が出来上がる。

 利用者層は大きく2つ。まず、顧客の6割を占めるのが収入のある独身男性だ。「家具選びをプロに任せて、そのまま購入する合理的な考えで利用する人が多い」と武藤氏は言う。もう一方は30代の4人暮らしなど比較的若年のファミリー層。こちらは女性が申し込むケースが多いという。

 このサービス開発背景には家具選びの難しさという消費者的観点ともう1つ、インテリアコーディネーターという個人が活躍できる場を広げるという思想がある。

 武藤氏は「インテリアコーディネーターは資格保有者が7万人いるものの、富裕層向けのサービスにとどまっていた」と言う。武藤氏自身は引っ越し好きで、理想の部屋を実現するためにインテリアコーディネーターに依頼をしようと検討したことがある。だが、「いずれも10万円以上がかかって非常に高額だった」(武藤氏)と振り返る。

インテリアコーディネーターをクラウド化

 ところが、実際は「インテリアコーディネーターは知名度で選ばれる。メディアなどに取り上げられないコーディネーターは仕事がほとんどない」(武藤氏)というのが実情だった。資格を取得しても工務店やハウスメーカーに就職する、有名インテリアコーディネーターの下で働く、独立するといった限られた選択肢しかないという。スキルを持つ人は多くいるのに、働く場所がないという業界の課題に武藤氏は気付いた。

 そこで考えついたのが、オンラインで完結するインテリアコーディネートサービスだった。これによって、コーディネート費用を従来の10万円から1万4900円まで圧縮したのだ。

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