5Gで仮想テレポーテーション 高速通信が生む感覚伝達のビジネス(画像)

新型コロナウイルスの影響で、ネット経由のリモートワークが広がりつつある。5Gの特性を生かせば、より高度な人間の視覚、あるいは触覚にまで訴える表現が可能となり、より質の高いサービスが生まれる。VR(仮想現実)の一歩先を行く「5Gテレポーテーション技術」によるビジネスの可能性を追った。

凸版印刷が開発する映像伝送技術「IoA仮想テレポーテーション」。視聴側ではVRゴーグルではなく、大型ディスプレーを使う(写真/丸毛 透)
凸版印刷が開発する映像伝送技術「IoA仮想テレポーテーション」。視聴側ではVRゴーグルではなく、大型ディスプレーを使う(写真/丸毛 透)

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 新型コロナウイルスの影響で、多くの人々が会社へのリモートアクセスや遠隔会議の利用を余儀なくされている。安定して通信できることの重要さに改めて気づかされたという人も多いだろう。高速大容量の5Gが広がることで、期待されるのは映像配信サービスの高度化。そうした5Gが広がった後の新しいユースケースの一例を示しているのが凸版印刷だ。同社は2019年11月、小中高等学校と遠隔地を4K映像と5Gを想定したネットワークでつなぐ学習支援サービス「IoA(アイオーエー)学園」の提供を開始した。16年より東京大学大学院の暦本純一教授と共同で研究・開発している「IoA仮想テレポーテーション」と呼ぶ独自技術を活用したものだ。

「バーチャル遠足」で学校需要を狙う

 IoAとはInternet of Abilities(能力のネットワーク)のこと。ネットワークの活用で人間の能力を拡張しようとする技術で、カメラを付けたロボットなどが現場を動き回り、遠隔地から操作するという仕組み。5Gの通信端末や大型ディスプレー、4Kカメラに加え、カメラを搭載したロボットを開発。ロボットが使えない場合は人が行くことも想定し、カメラを首周りに装着する装置も作った。

 東京大学の暦本教授は「従来のシステムでは画面上でやり取りするだけだが、今回のようにロボットや体にカメラのような装置を“ジャックイン”することでバーチャルな空間移動も可能になる」と話す。

IoA仮想テレポーテーションで利用する撮影側のロボット(左)。視聴側からゲームのコントローラーでロボットを動かす。ロボットの代わりに人が撮影するときのために肩掛けカメラ(写真右、試作品のためスマホを利用)も開発した。肩掛けカメラの場合は、音声で移動の指示をする(写真/丸毛 透)
IoA仮想テレポーテーションで利用する撮影側のロボット(左)。視聴側からゲームのコントローラーでロボットを動かす。ロボットの代わりに人が撮影するときのために肩掛けカメラ(写真右、試作品のためスマホを利用)も開発した。肩掛けカメラの場合は、音声で移動の指示をする(写真/丸毛 透)

 視聴する側では、VRゴーグルではなく大型ディスプレーを使うので、視野が広くなり臨場感も高い。これを使ったIoA学園では、移動にかかる時間的な制約や人の身体的な制約を取り払うことで学びの場を提供する狙いがある。

【特集】発進「日本版5G」実サービスの真価

 まずは一般社団法人ふたばプロジェクトとNTTドコモが協力し、19年11月に福島県いわき市の双葉町立双葉南・北小学校で行われた校外学習「2019バーチャルふるさと遠足」で活用した。東京電力福島第1原発が立地する福島県双葉町は、東日本大震災から9年経過しても、ほとんどが帰還困難区域に指定されている。

 双葉南・北小学校は、いわき市に避難をしている児童が学ぶ仮設校舎だ。子供たちに、ふるさとの現状を知ってもらい、今後の復旧に向けた取り組みを理解してもらうことを狙った。15歳未満の子供が立ち入ることが難しいエリアへ、遠足ができるようにした。

福島県いわき市で行われた「バーチャルふるさと遠足」の様子。福島県双葉町の現状を映し出すとともに、現地で働く人々の話を聞いた
福島県いわき市で行われた「バーチャルふるさと遠足」の様子。福島県双葉町の現状を映し出すとともに、現地で働く人々の話を聞いた

 今回は5Gやロボットを活用しなかったが、200インチのスクリーン大型ディスプレーを設置して、ドローンによる空撮の映像や、双葉町で復旧活動を行う企業や場所を担当者が訪問した。双方向で結び、働く人々へのインタビューなどを通じ、双葉町の現状を知ってもらった。