携帯電話の通信網と言えば、NTTドコモなど携帯電話の事業者が構築するのが当たり前だった。5Gでは、多彩なプレーヤーが自前の通信網をつくる「ローカル5G」という新しい仕組みが登場した。安全かつ安定的に高精細画像を送信するといった用途で新ビジネスを生み出すために不可欠な技術となりそうだ。

ローカル5Gの通信網を整備するコニカミノルタの新開発拠点「Innovation Garden OSAKA Center」
ローカル5Gの通信網を整備するコニカミノルタの新開発拠点「Innovation Garden OSAKA Center」
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 2020年10月、大阪府高槻市にコニカミノルタの新開発拠点「Innovation Garden OSAKA Center」が竣工する。通常の研究施設と異なるのは、構内でローカル5Gの通信網を整備すること。「5Gの登場により、今までできなかったことが可能になるが、具体的な形にするには多彩なアイデアが必要」と、コニカミノルタ執行役 画像IoTソリューション事業部 兼 映像ソリューション事業部 兼 IoTサービスPF開発統括部担当の江口俊哉氏は話す。

 新研究棟では5Gを活用し、コニカミノルタが得意とする画像処理の技術を生かす用途を探る。オープンラボとして、地域の企業や大学と、多くの人々が集まり、5Gを検証する場にする考えだ。1フロアの幅は約100メートル。まずは、その1フロアの約4分の1をカバーするローカル5Gの通信エリアを構築する。21年以降には全フロアへ拡大する考えだ。ローカル5G網は、NECの協力を得ながら構築する。

【特集】発進「日本版5G」実サービスの真価

 コニカミノルタは、オフィスや製造現場に設置した高画質カメラの映像を、複写機内部のコンピューターによるAI(人工知能)の深層学習で分析、生産性の向上や業務の効率化に役立てる、といったサービスを提供してきた。5Gと組み合わせることで、より利便性の高いサービスの開発を目指す。

コニカミノルタ執行役 画像IoTソリューション事業部 兼 映像ソリューション事業部 兼 IoTサービスPF開発統括部担当の江口俊哉氏
コニカミノルタ執行役 画像IoTソリューション事業部 兼 映像ソリューション事業部 兼 IoTサービスPF開発統括部担当の江口俊哉氏
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 ローカル5Gと映像分析の組み合わせは、マーケティング分野にも応用できる。例えば、店舗の天井に設置したカメラを使い、年齢や性別だけでなく、顧客の骨格の動きを分析。棚から商品を手に取り、何秒見て、実際に買ったのか、あるいは棚に戻したのか。そんな店舗内の顧客の行動を分析する技術を、コニカミノルタは既に開発している。将来、そうした使い方と5Gを連動させれば、「全国の多数の店舗でリアルタイム検証ができるようになる」と江口氏は指摘する。

無線通信も高い安全性が必要

 国内では19年12月に総務省がローカル5Gを制度化し、ローカル5Gの電波を使う免許の割り当てを開始した。NEC、コニカミノルタ、富士通、三菱電機、東京大学などがローカル5Gの事業や環境構築に取り組んでいる。NTTドコモなど大手の携帯電話事業者が相次いで5Gの商用サービスを開始する中、なぜこれらの企業や教育機関が独自のローカル5G網を用意する必要があるのか。

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