eスポーツタイトルとして定着した『Shadowverse』、リリースから5年たつも右肩上がりの『グランブルーファンタジー』などを展開するCygames。前編で同社の木村唯人専務に国内外のビジネス戦略を聞いたのに続き、後編では対戦格闘ゲーム『グランブルーファンタジー ヴァーサス』をはじめとした2020年の新タイトルについて質問を掘り下げる。

Cygamesでゲームビジネスの陣頭指揮を執る木村唯人専務
Cygamesでゲームビジネスの陣頭指揮を執る木村唯人専務

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2020年は新作3タイトルを予定

――2020年にはどんなタイトルに注力しますか。

木村氏 全てのタイトルに注力するのが前提ですが、トピックを上げるなら、まずは2月に発売した『グランブルーファンタジー ヴァーサス』(グラブルVS)です。これは、『グラブル』のキャラクターを使った対戦格闘ゲームになっています。加えて、多くの方をお待たせしてしまっている『ウマ娘 プリティーダービー』(ウマ娘)、『Shadowverse』のコンシューマースピンオフタイトルとなる『シャドウバース チャンピオンズバトル』もNintendo Switch向けに発売の予定です。

――『ウマ娘』は過去にリリースを延期されたタイトルです。延期による変化は大きいのでしょうか?

木村氏 簡単に作れるゲームではないため、試行錯誤に時間をかけたのですが、その分クオリティーの高いものになっていると思います。

『ウマ娘 プリティーダービー』
『ウマ娘 プリティーダービー』

――『グラブルVS』は好調ですね。

木村氏 対戦格闘ゲームの新規IPとしては良い滑り出しです。既存の『グラブル』ファンだけでなく、格闘ゲームが好きな人にも遊んでいただけています。eスポーツの競技種目として期待されていること、PlayStation4のコントローラーにマッチした操作感が受け入れられたことがあるのではと思います。

『グランブルーファンタジー』のキャラクターを使った対戦格闘ゲーム『グランブルーファンタジー ヴァーサス』
『グランブルーファンタジー』のキャラクターを使った対戦格闘ゲーム『グランブルーファンタジー ヴァーサス』

――他の格闘ゲームの有名プレーヤーにも遊んでいる人が多いようです。

木村氏 歴史の長いタイトルの場合、有名プレーヤーがそれまで遊んでいたタイトルから離れると「本職に専念しろ」などとたたかれたりもしますが、『グラブルVS』は新規のIPなので許されているようなところがありますね。2作、3作と続くとファンの固定化が起こる可能性もありますが、そうならないでほしいなとは思っています。

――一方で、今から格闘ゲームを始めるのは障壁が高いと感じる初心者が入りやすい部分もあります。

木村氏 そうですね、今ならみんな初心者ですから。格闘ゲームとしては今時珍しい「みんなゼロから始められるタイトル」というポジションになれました。

 たくさんの人がカジュアルに楽しめるゲームでありつつ、頂点ではeスポーツとして大会が開けるくらい奥深い。そうした2つの面をしっかり打ち出せれば、今の立ち位置を維持できるかなと思っています。

『グラブルVS』で海外におけるIPの認知を向上

――『グラブルVS』の国内プロモーションは『グラブル』本編と連動させて展開するのでしょうか。

木村氏 『グラブルVS』にも「RPGモード」がありますが、『グラブル』本編ともストーリー上のつながりを持たせています。キャラクターについても『グラブル』で人気のあるキャラを『グラブルVS』に参戦させています。さらに、『グラブルVS』のボスとして新たに生み出したキャラを先行して『グラブル』のイベントに出し、それから『グラブルVS』に登場させるといったこともしました。それによって、既存の『グラブル』ユーザーにも『グラブルVS』を魅力的なタイトルと受け取ってもらえたと思います。

「新タイトル『グラブルVS』は既存のグラブルファンにも魅力的なタイトルと受け取ってもらえたと思う」と木村専務
「新タイトル『グラブルVS』は既存のグラブルファンにも魅力的なタイトルと受け取ってもらえたと思う」と木村専務

――海外展開はいかがでしょう。

木村氏 『グラブル』は国内外で人気のあるキャラクターに違いがあまりないんです。『グラブルVS』のグローバルでの初動が良かったのはそれも影響していると思います。

 また、今回の『グラブルVS』は世界へ向けたグローバルタイトルですが、『グラブル』本編はリリース地域が限られています。英語版はありますが、日本在住の方向けで、海外で正式にリリースしているわけではありません。『グラブルVS』を機に世界でもシリーズとしての認知度を上げていきたいですね。

――派生作品を本編の足がかりにするという逆転の発想が面白いですね。他のタイトルに関しての海外戦略はどうお考えでしょう?

木村氏 いろいろ展開したいとは思っています。というのも、日本製のゲームをアレンジすることなく海外でもそのまま出したいというニーズが今はかなり高まっています。1つゲームを作ったら「海外でも出して当たり前」という雰囲気になってきています。

 現在リリースしているタイトルでは、『プリンセスコネクト!Re:Dive』(プリコネ)が非常に好調です。『プリコネ』は「アニメRPG」というジャンルで配信していますが、「アニメ」と「ゲーム」が融合した日本らしいコンテンツをしっかり作り切ったことが海外でも評価していただけているのかなと思います。

アニメRPG『プリンセスコネクト!Re:Dive』
アニメRPG『プリンセスコネクト!Re:Dive』

Nintendo Switch版『Shadowverse』は入門編

――『シャドウバース チャンピオンズバトル』にはどういった狙いがありますか?

木村氏 20年4月から「シャドウバース」のアニメが始まりました。そこからゲームにスムーズに入ってもらうための入門編という位置付けがまず1つ。もう1つ、アニメのキャラクターたちはそのままだとスマホやPC版の『Shadowverse』に出しづらいので、彼らが登場するストーリーをゲームとしてしっかり描ける場が欲しいという思いもありました。『シャドウバース チャンピオンズバトル』はアニメの世界を体験できるRPG部分に力を入れています。

テレビアニメ版「シャドウバース」
テレビアニメ版「シャドウバース」

 『Shadowverse』は長く続くタイトルにしたいので、幅広い世代に遊んでもらうための入門的な立ち位置のタイトルを出したかったんです。『Shadowverse』は中高生くらいから遊んでくれていますが、さらにそれより下の年齢層にアピールできるのではないかと期待しています。スタンドアロンなタイトルで、頑張れば全てのカードを追加料金なしにそろえられますし、自分のスマートフォンをなかなか持たせてもらえない小さなお子さんでも、Nintendo Switchなら持っているかもしれません。外に持ち出して公園などで友達と遊んだりしてくれるといいですね。

Nintendo Switch向けにリリースする『シャドウバース チャンピオンズバトル』
Nintendo Switch向けにリリースする『シャドウバース チャンピオンズバトル』

子どもたちに「eスポーツを見る楽しさ」を伝えたい

――eスポーツにはどう取り組まれますか。

木村氏 20年も「Shadowverse World Grand Prix 2020」を開催する予定です。『Shadowverse』はeスポーツとして確実に根付いてきている実感がありますね。プレーヤーとして大会出場を目指す人が増えていますし、毎年開かれる興行として定着してきたとも思います。加えて、年間通して開催しているプロリーグ「RAGE Shadowverse Pro League」もeスポーツのファンを根付かせることに結び付いています。

――こちらも好調のようですが、課題はありますか?

木村氏 集客ですね。全体としてまだまだ伸ばしたいですし、今後は低年齢層にもeスポーツを見る楽しさを伝えたいと考えています。

――具体的なアイデアはあるのでしょうか?

木村氏 先に挙げたアニメ「シャドウバース」もその1つですね。アニメのなかでプロ選手を描こうと考えています。実在のプロ選手が出てくるわけではありませんが、アニメを通じてリアルの世界にも“プロ”がいることは伝えられると思います。

――野球やサッカーはプロ選手が登場するマンガやアニメが昔からありますね。

木村氏 そうですね。それと同じように、プロがフィクションのなかだけでなくリアルにもいるという見せ方をできるのが『Shadowverse』の強みだと思っています。それが「自分もプロになりたい」という思いにつながってくれればいいですね。

――最後に20年をどんな1年にしたいか、お聞かせください。

木村氏 先のお話と重なりますが、既存コンテンツも新作タイトルも、モバイルもコンシューマーも、「全方位」で良いものをお届けできる1年になるように取り組んでいきたいと思います。既存コンテンツのユーザーの方々により満足いただけるものを作るとともに新作タイトルはモバイルで『ウマ娘』、コンシューマーで『シャドウバース チャンピオンズバトル』をしっかりと作り切りたいですね。

 またアニメについても放送中の「シャドウバース」と「プリコネ」の2タイトルで最後までクオリティーが高いものを世の中に届けていきたいと考えています。

木村 唯人(きむら ゆいと)氏
Cygames専務取締役
東京大学大学院卒業後、カナデン、シリコンスタジオを経て、2011年、渡邊耕一代表とともに創立メンバーとしてCygamesに参加。『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』『シャドウバース』『プリンセスコネクト!Re:Dive』などのプロデューサーを務め、2019年5月より現職。運営中のタイトル以外に、『グランブルーファンタジー ヴァーサス』や『シャドウバース チャンピオンズバトル』などの家庭用タイトルのプロデューサーも担当するなど、経営と並行して、ゲーム開発にも深く携わっている

(写真/志田彩香、写真提供/Cygames)