対戦型オンラインカードゲーム『Shadowverse』は、プロリーグや賞金1億円超の大会も開催されるeスポーツタイトルとして定着。5周年を迎えた『グランブルーファンタジー』も引き続き右肩上がりだ。同社ゲームビジネスの陣頭指揮を執る木村唯人専務に国内外のゲームビジネスの現状を聞いた。
「Shadowverse」世界大会は埼玉県が後援
――2019年はCygamesにとってどういう年でしたか?
木村唯人氏(以下、木村氏) 新作タイトルとしては、19年11月に『ワールドフリッパー』をリリースし、多くの方にプレーしていただくことができました。「ピンボール」のモチーフからくるゲーム性からか、当社のこれまでのタイトルと比べると比較的ライトにゲームをプレーされる方にも遊んでいただけています。
――同じ12月には、『グランブルーファンタジー』(グラブル)のイベント「グラブルフェス 2019」も幕張メッセで開催しました。
木村氏 こちらはこれまで2日間だったところを3日間に伸ばし、規模を拡大しました。やはり多くの方にご来場いただけました。『Shadowverse』も『グラブル』も、Cygamesが開催したリアルイベントとして18年より進化し、より良いものを提供できたと思っています。
『グラブル』内にガチャピンが登場
――ゲームは既存タイトルが好調だったとうかがいました。
木村氏 特に『グラブル』のユーザーは大きく伸びました。20年3月で6周年を迎えたタイトルですが、いまだに右肩上がりです。比較的新しいタイトルとしては18年2月リリースの『プリンセスコネクト!Re:Dive』(プリコネR)も非常に伸びました。『Shadowverse』も引き続き好調を維持しています。
――『グラブル』が伸び続けているのは活性化の施策が奏功しているということでしょうか?
木村氏 ゲーム内外でのコンテンツの拡充と打ち出し方がうまくいっています。ゲーム内でのイベントやキャンペーンなど、こちらが仕掛けた「すごいこと」を、ユーザーにそのままの熱量で「すごいこと」として受け取ってもらえるようにきちんとアピールできている手応えがありますね。
――「ゲーム内外」の意味を詳しく教えてください。
木村氏 例えばゲーム内については、19年末から20年にかけて「ゆく年くる年キャンペーン」と銘打ち、毎日10連以上、最大200連のガチャが無料になるキャンペーンを実施しました。毎日、それも最大200連という規模は他社にもないものだと思います。こうしたキャンペーンはゲームバランスにも関わりますから、プロジェクト側、つまりゲームの運営を行っている側から発案しないと実現しません。
このキャンペーンはガチャピンとムックを使っているのも特徴です。ルーレットによって10連ガチャを引ける回数が決まり、さらにガチャピンとのじゃんけんに勝つとその回数が2倍になる、その結果最大200連も可能という仕様でした。ガチャピンとムックを使ったプロモーションやキャンペーン自体はもう2~3年続けていますが、年末のタイミングではゲーム中にもガチャピンとムックを登場させたのが新たな試みです。
キャンペーンの前にガチャピン、ムックと一緒に冒険するコラボイベントを実施し、どうして彼らが出てきてガチャが無料になるのかといったことをストーリーとして展開しました。
ロングヒットだからこそ長期キャンペーンが可能
――キャンペーンを継続して展開し、内容を充実させているんですね。
木村氏 そういう意味では、19年3月の5周年の際に実施したストーリーイベント「000 どうして空は蒼いのか Part.III」も3周年、4周年のイベントとつながる内容にしたことで、とても盛り上がりました。3年もかけて完結させるゲームイベントもそうそうないですからね。

それと同時に、ゲームの外、リアルのイベントにも、開発チームのメンバーはかなり深く関わっています。そうすることで、ゲームに密接にリンクした、ユーザーのみなさんに喜んでもらえるイベントを作れていると思います。
こうした取り組みは手間がかかりますが、だからこそ『グラブル』は競合タイトルに比べてコンテンツが増える量が桁違いに多いと自負しています。そのうちのどれかに興味を持ってもらえれば、プレーの継続やユーザー増につながります。すべてのユーザーの方に対してすべての取り組みが成功しているわけではなく、たくさんあるうちのどれかしらが刺さり、うまくいっているという感じでしょうか。ロングヒットになっていることで施策が洗練されてきている面はありますね。
――そうした施策が結果的に休眠ユーザーの掘り起こしにつながっているということですか?
木村氏 どの企業もアクティブユーザーや休眠ユーザーのデータを取っていると思いますが、実際は休眠かアクティブかの二極ではなく、時期や条件によってその間をふらふら移動している人が多いんだと思います。その時々の瞬間的な状態がKPI(重要業績評価指標)上で「何人プレーしている」と見えているだけではないですかね。
そのゲームを遊ぶ頻度が毎日なのか、週1回なのか、月1回なのか、常に状態は変わっている。だから、例えば3カ月に1回遊ぶプレーヤーが3カ月ぶりに遊んだとき、どんなゲーム体験ができるかを常に考えています。「遊ぶのが3カ月に1回なら、このタイミングが楽しいよ」というポイントをこちらから作るんです。
逆に毎日遊んでいた人のプレーが途切れたとき、それで心が折れてしまうような状態を作らないことも心掛けています。
それぞれのユーザーの状態に合わせたいろんな遊び方を用意することが、結果的に多くのユーザーのプレー頻度を増やすことにつながるのでしょう。ただ、この体制は正直、かなり大変ですけどね(笑)。
Cygames専務取締役
(写真/志田彩香、写真提供/Cygames)
※インタビューはゲーム、アニメ、eスポーツで世界観を拡散 Cygamesの全方位展開に続きます。