理想は自社と他社のIPが半々

――まさにバンダイナムコグループのIP軸戦略とつながりますね。ところで、BNEが扱うIPにはオリジナルIPと他社のIPがあります。今後はオリジナルIPを増やしていくのでしょうか。

宮河氏 目標はオリジナルIPと他社IPが半々になることですが、オリジナルはまだ少ないです。やはり、オリジナルIPを生み出すのは相当難しいですから。

 一方で、他で生まれた素晴らしいIPを我々が預かれば、その経済圏を絶対に大きく広げられますよというのがバンダイナムコグループの強みです。その強みを生かしながら、オリジナルIPについてはじっくりと考えていこうと。

――他社IPの経済圏を広げていくと、結果的に敵を育ててしまうということにはなりませんか?

宮河氏 そうなっても問題ありません。エンターテインメントの世界にはシェア争いがないので。むしろ、他社からでも大きなヒット作が出れば、業界全体が盛り上がる。大歓迎です。

 普段、映画を年5回見ている人が、1本のヒット作で映画により興味を持ち、年に10回見るようになったら、業界全体が盛り上がるじゃないですか。業界がしぼんでしまったら、各社が独自に何かやろうとしても大変です。

――1つのIPを軸に、ゲーム、映像、フィギュアなどといったビジネスに広げ、さらに新しいビジネス創出を考えていくというのは、そう簡単なことではないと思うのですが。

宮河氏 BNEには今年で2回目になる「バンナムSEED」という社内プログラムがあるんです。新規事業のアイデアや起業アイデアを募り、面白いものには資金を出して実際にやらせます。先日もそのプレゼン大会があり、すぐにでもやらせたいものが出てきました。僕の基準では「こういうことをすると、これだけもうかります」というのではダメ。重要なのはどれだけ情熱があるかです。

社内から新規事業や起業のアイデアを募る「バンナムSEED」。プレゼンで宮河氏が重視するのは「どれだけ情熱があるか」だという
社内から新規事業や起業のアイデアを募る「バンナムSEED」。プレゼンで宮河氏が重視するのは「どれだけ情熱があるか」だという

 19年、国内男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」の「島根スサノオマジック」の経営権を取得しましたが、これも事業アイデアを出した若い社員が、自ら島根に骨を埋める覚悟で行くと宣言したわけです。それだけやる気があるならやってみなさいと。エンターテインメント業界にかかわらず、今の日本でそういう挑戦者が減ってしまったように感じるのが、とても寂しいですね。ですから、僕は社員に「常に挑戦する気持ちを持って仕事をしてください」と強く呼びかけています。

――プロバスケットボールとIP軸戦略にはどんな関わりがあるのでしょうか?

宮河氏 プロバスケットボールという競技はIPにならないけれど、スサノオマジックというプロチームがIPなわけです。これからそのIPをどう育て広げていくか。それを今、考えています。

 僕も島根に行ってスポーツの試合を、初めて最初から最後まで真剣に観戦したんですが、とても面白かった。そこで、はたと気づいたんです。これまで自分が手掛けてきたものは、映像にしろライブにしろ、シナリオがあり演出があって人々を楽しませるもの――。ちょっと言いすぎかもしれませんが「嘘の世界」をつくってきた。でも、スポーツにはシナリオも演出もない。それがなくても人を楽しませることができるエンターテインメントなんですね。十分にエンターテインメントビジネスとして拡大する価値があります。

 我々が扱うのはエンターテインメントです。だから、エンターテインメントの枠を外れないのであれば、若い社員にはなんでもやってみなさいと言っています。

昨年、経営権を取得したバスケットチーム「島根スサノオマジック」も、若い社員の熱意から生まれた。実際に観戦して「エンターテインメントビジネスとして拡大する価値がある」と感じたという
昨年、経営権を取得したバスケットチーム「島根スサノオマジック」も、若い社員の熱意から生まれた。実際に観戦して「エンターテインメントビジネスとして拡大する価値がある」と感じたという

――最後に個別のタイトルの20年の動きを聞かせてください。

宮河氏 まずパックマンが40周年を迎えます。それに合わせて、米国発でいろいろなものを出していきます。北米でのパックマンの知名度は、日本にいると想像できないくらい圧倒的なんですよ。僕は最近、パックマンとコラボしているアパレルを着ることが多いんですが、米国ではホテルのフロントで「パックマン!」と言われることがすごく多い。

 ファンの年齢層は40代が中心ですが、今考えているのは、その人気をその下の世代にも広げる、親子2代で楽しめる仕掛けです。そういうのはバンダイナムコグループの得意とするところなので。

1980年にアーケードゲームとして誕生した「パックマン」は今年が40周年。日本以上に人気の高い米国発で、さまざまなアイテムを出していく計画だ
1980年にアーケードゲームとして誕生した「パックマン」は今年が40周年。日本以上に人気の高い米国発で、さまざまなアイテムを出していく計画だ

――サンライズ時代に手掛けてきた「ガンダム」はどうでしょう?

宮河氏 ガンダムに関しては、すでに話題になっている実物大の「動くガンダム」のプロジェクト「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」が、20年夏に向けて進行中です。状況は「YouTube」で見られます。またガンダムとシャア専用ザクのプラモデルを搭載した超小型衛星「G-SATELLITE」が国際宇宙ステーションから宇宙空間へ放出される「G-SATELLITE 宇宙へ」もあります。僕の立場はサンライズからバンダイナムコエンターテインメントに変わりましたが、日本から世界へ発信していくイメージを持ちながら、グループ全体でガンダムを盛り上げていきます。

宮河氏が着ていたのもパックマンとファッションブランドがタイアップしたトレーナーだった
宮河氏が着ていたのもパックマンとファッションブランドがタイアップしたトレーナーだった
宮河 恭夫(みやかわ・やすお)氏
1956年、東京都生まれ。81年バンダイに入社。ガンプラ、女児向け玩具、ゲームなど様々な事業に携わった。2000年にサンライズに入社し「機動戦士ガンダムSEED」など人気アニメを数多くプロデュース。14年にサンライズ代表取締役社長に就任し、19年、バンダイナムコエンターテインメントの代表取締役社長に就任、以来現職。20年からはチーフ・パックマン・オフィサー(CPO)も兼務する

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(写真/稲垣純也、写真提供/バンダイナムコエンターテインメント)

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