2022年の観光シーズンが訪れたものの、相変わらず収束と感染拡大の波を繰り返し続ける新型コロナウイルスにより、観光業界の苦境は続いている。そうした中、星野リゾートはアフターコロナも見据え、22年4月に新たな市場にアプローチする「スモールマスマーケティング戦略」を打ち出した。既に動き出しているこの戦略、具体的にはどのようなものなのか、星野佳路代表に聞いた。
特殊なニーズに合わせ市場を創出
「スモールマス」は、ビジネスの世界では花王が2015年に提唱した考え方だといわれている。マスほど大きくはないが、ある程度ボリュームのあるマーケットのことを指す。ライフスタイルの変化に伴う多様なニーズの登場を背景にするというが、星野リゾートにとっての“スモールマス市場”とは、どのようなものなのだろうか。
星野佳路代表(以下、星野) 「スモールマスマーケティング戦略」は、それほど大きくはないけれども特殊なニーズが存在する市場にターゲットを絞り、その市場ごとに需要の創出を狙う戦略です。ただし、いくらスモールといっても、あまりに小さ過ぎる市場はターゲットには不向きです。
スモールマスマーケティング戦略は星野リゾートの特定の施設、あるいは特定のブランドではなく、星野リゾートの全施設で取り組む戦略です。「この施設でやっている」「このブランドでやっている」ではなく、「星野リゾート全体でやっている」からこそ、顧客に安心感を与えられて、星野リゾートの施設を選ぼうと思ってもらえます。星野リゾート全体で取り組む以上は、スモールとはいえ、ある程度の市場規模が必要です。
そこで今回ターゲットとしたのが、「ビジネス利用」「新たな市場創造」「シニアマーケット」「ミレニアル・Z世代」「愛犬家」「北海道民(セイコーマートクラブ会員)」の6つの市場です。これらの市場の需要創出には、実はかなり以前から取り組んでいるものも多いのですが、新型コロナウイルス禍を機に急激に進んだ面があります。
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