大きさ、重さ、速さ、人数、件数、コスト――何事にもよらず、物事には“適正”というものがある。それでは、旅行業界が大打撃を被った新型コロナウイルス禍にもかかわらず、驚くほどのスピードで施設数を拡大し続ける星野リゾートにとって、「適正規模」というのは存在するのだろうか。そんな素朴な疑問に、「考えていない」と星野佳路代表は言い放つ。
現在は限界に挑戦している時期
星野リゾートの星野佳路代表は、「良い案件ならば運営の依頼を断る理由はない」と言う。確かにその通りだろうが、規模の拡大にも“限度”というものがあるだろう。コロナ禍など意に介さないかのようなここ数年の開業ラッシュに対し、その“限度”がどこにあるのか気になる人も多いに違いない。星野代表は星野リゾート全体、あるいは各サブブランドにおける最大施設数や適正施設数について、どのようなイメージを持っているのだろうか。
星野佳路代表(以下、星野) 星野リゾートに対する運営依頼の話は、ここ最近で急激に増えたわけではありません。実はバブル経済の崩壊後からです。小泉純一郎内閣時代の2001年から03年くらいにかけて不良債権処理が始まりましたが、そのあたりからでしょうか。
1987年にリゾート法(総合保養地域整備法)が制定されて、日本中にリゾートやホテルができました。しかし、どちらかといえば調子のあまりよくないリゾートのほうが多かった。そこで、不良債権をなくすためにより強い運営会社に任せるという動きが起こりました。星野リゾートに運営依頼の話が増えたのは、その頃からです。
その後も、リーマン・ショックや今回のコロナ禍など、経済的な危機が起こると運営会社を変えようという動きになるのでしょう。そういう時期に話をいただくケースが増えています。
現在では施設数も増えてきましたが、適正規模については、そもそも何をもって“適正”と判断するのかが非常に難しいと思います。外資ホテルチェーンは、私たちとは比べものにならないほど多彩なブランド展開を、それこそ世界中で行っています。星野リゾートも彼らと同じホテル業界にいて、業務内容も同じです。そうした中で、宿泊者の方々は自分たちが利用したい施設の選択を行っています。
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