星野リゾートの数あるサブブランドの中で、“自立”への方向へ舵(かじ)を切った温泉旅館ブランド「界」。「星野リゾート」という強力なマスターブランドの名を外したサブブランドの登場で、同社のブランド戦略は新たなステージに立った。実は今回、界を個別ブランドとして自立させた背景には、グループ全体のブランド構造を揺るがしかねない事情があったと星野佳路代表は打ち明ける。

星野リゾート代表の星野佳路氏
星野リゾート代表の星野佳路氏
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異色なブランド「OMO」の急拡大

 星野リゾートの温泉旅館ブランドである「界」は、運営開始から10年を経て施設数が19にまで増えた。それに伴いマスターブランドの庇護(ひご)の下を離れ、自立したブランドの道を歩み始めた。しかし、この新たなブランド戦略の背景には界だけではなく、もう1つのサブブランドの急成長があった。


星野佳路代表(以下、星野) 星野リゾートが「界」ブランドを自立させた背景には、実は「OMO(おも)」が急拡大したこともあります。2021年には「OMO3京都東寺」「OMO5京都三条」「OMO5京都祇園」「OMO5沖縄那覇」の4施設が開業し、22年の上半期だけでも「OMO3東京赤坂」「OMO5小樽」「OMO3札幌すすきの」「OMO7大阪」の開業を控えています。

 OMOは都市観光ホテルとして立ち上げたブランドですが、観光産業でコロナ禍の影響を受けてもっとも苦しんだのが都市部にあるホテルです。21年に開業した京都の3つのOMOも、コロナ禍で立ち行かなくなった施設の運営を引き継いだもので、22年に開業予定の北海道の2施設も同様です。

2022年1月7日に開業した「OMO5小樽」は、3階建ての南館と7階建ての北館からなり、客室数は92(画像提供/星野リゾート)
2022年1月7日に開業した「OMO5小樽」は、3階建ての南館と7階建ての北館からなり、客室数は92(画像提供/星野リゾート)
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 コロナ禍で撤退したものの、オーナーや投資家の方は長期的には需要が回復すると見込んだのでしょう。一方、星野リゾートとしても、都市観光ホテルとしてOMOブランドという受け皿があった。その結果、声をかけていただき、苦しかった都市部で施設数が増えるという状況が生まれました。

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