「雲海テラス」の大ヒットで、メインは冬のスキー場でありながら夏場の集客を実現した「星野リゾート リゾナーレトマム」。しかし魅力は雲海だけにとどまらない。多くの人が北海道に対して描くであろうイメージの「牧場」の整備にも着手している。星野リゾート最大の広さを誇る施設だけに、魅力開発の余地も広大だ。
ホテルの枠を超えた乳製品の生産
リゾナーレトマムが夏場の集客を考える上で、「雲海テラス」が山頂の魅力に対し、山麓の魅力となるのが牧場の「ファームエリア」だ。星野リゾートがトマムでの運営を引き継いだ時にはゴルフ場だった場所だが、2016年の台風で損傷したのを機に牧場への転換を決意した。17年からファームとして運営を開始し、牛や馬、羊やヤギなどを放牧している。
「ゴルフ場を継続することもできたのですが、リゾートとして開発される前は700頭の牛がいて、農業が営まれていた場所だったので、本来の風景を取り戻したいという思いがありました。また、北海道には滞在型の牧場がなかったので、それが差別化につながるだろうと考え、ファームを立ち上げました」と、星野リゾート・トマムの渡辺巌総支配人が語る。
北海道には牧場がいくつもあるが、衛生面などから放牧されている牛などを間近で見られる場所は意外に少ない。リゾナーレトマムでは衛生管理を徹底し、動物をすぐそばで見られるようにした。ファームエリアは100ヘクタールという広さを誇るため、乗馬や牛追い体験、牧場ラウンジなど多彩なアクティビティやスポットがあるが、中でも21年7月1日から始まった全長30メートルの「巨大牧草ベッド」は、文字通りふかふかな牧草の上で目の前の牛を見ながら寝転ぶという、他ではあまりできない体験が楽しめる。
牧場本来の風景を取り戻すことに関しては、単に放牧をして、アクティビティを提供するだけでなく、生産活動も欠かせない要素だと考えている。そこで19年には、搾乳や乳製品の製造を行うプロジェクト「ファーム星野」も立ち上がった。既に牛乳やソフトクリーム、チーズといったトマム産の乳製品も完成し、それらを施設内で味わうことができる。
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