前回に引き続き、「星野リゾート 奥入瀬(おいらせ)渓流ホテル」の魅力開発の裏側に迫る。「苔(こけ)さんぽ」のヒットにあぐらをかくことなく、常に進化する同施設の取り組みは、奥入瀬渓流という土地の性格まで変えようとしている。
サブブランドを気にせず魅力を打ち出せる
奥入瀬渓流ホテルは、「星のや」や「リゾナーレ」「界」といったサブブランドに分類されず、「青森屋」や「西表島ホテル」同様、「そのほかの個性的な宿泊施設」として運営されている。これについて同ホテルの髙橋伶央総支配人は「とてもいいことだと思っています」と明言する。
「奥入瀬渓流ホテルの着任前に『リゾナーレ トマム』で働き、サブブランドの施設も経験したので分かるのですが、『そのほかの個性的な宿泊施設』とは、サブブランドの枠組みでは収まりきらないほど個性の強い施設ということです。それはサブブランドに縛られず、独自の魅力を打ち出せるということでもあるので、こちらも燃えますね」(髙橋総支配人)
魅力開発という点で前向きにとらえれば、確かにそういうことになるだろう。とはいえ星野リゾートの施設の中で、奥入瀬渓流ホテルは特に認知度が高いわけでもない。それを考えると、マーケティング面ではサブブランドをうまく取り込んだほうが有利に思える。だが、髙橋総支配人の見解は「NO」だ。
「例えば30室程度の施設であったなら、サブブランドの約束事を守り、その枠内で運営をするほうが有利かもしれません。しかし187室もあると、ある程度ターゲットを全方位に設定しないとマーケティングは成立しないと思っています。サブブランドでの立地条件や施設の特性に関する約束事を守るには、現在の奥入瀬渓流ホテルでは様々な課題が浮き彫りになってきます」(髙橋総支配人)
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