星野リゾートが開発してきた数々の魅力的なコンテンツの中にあって、北海道「リゾナーレ トマム」の「雲海テラス」と並ぶ大ヒットといわれるのが、青森県にある「星野リゾート 奥入瀬(おいらせ)渓流ホテル」の「苔(こけ)さんぽ」だ。苔に着目したコンテンツはどのようにして生まれ、いかにして多くの支持者を獲得したのか。その魅力開発の裏側を紹介する。

「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」の「ロビー 森の神話」。鳥や人間、妖精などが描かれた巨大な暖炉は岡本太郎氏の作品
「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」の「ロビー 森の神話」。鳥や人間、妖精などが描かれた巨大な暖炉は岡本太郎氏の作品

地元の人ですら気づかなかった「苔」の魅力

 十和田湖を水源とし、太平洋まで流れる約70キロメートルの奥入瀬川。このうち、上流に当たる約14キロメートルを「奥入瀬渓流」と呼ぶ。十和田八幡平国立公園内にある奥入瀬渓流は、国の「特別保護地区」「特別名勝」「天然記念物」に指定され、“自然の三冠王”と呼ばれる場所。日本において、この3つの冠を持つ景勝地区は、奥入瀬渓流と長野県の上高地、富山県の黒部峡谷の3カ所だけである。この奥入瀬渓流沿いに立つ唯一の宿泊施設が「奥入瀬渓流ホテル」だ。

奥入瀬渓流でも屈指の景勝地といわれる「阿修羅(あしゅら)の流れ」ではたけだけしい水の流れが岩に打ち付ける
奥入瀬渓流でも屈指の景勝地といわれる「阿修羅(あしゅら)の流れ」ではたけだけしい水の流れが岩に打ち付ける

 これまで星野リゾートが展開してきた多彩なコンテンツの中で、特に大ヒットといわれるのが、2014年からこの施設で行われている「苔さんぽ」である。約300種が生育する奥入瀬渓流の苔を観察しながら渓流沿いを歩く、約2時間50分のアクティビティだ。

 苔さんぽのガイドスタッフの一人が、奥入瀬渓流ホテル・アクティビティ総支配人の丹羽裕之氏。奥入瀬の自然に魅せられて北海道から移住し、星野リゾートのパートナー企業のネイチャーガイドを経て、13年に入社した。以前から苔の魅力に取りつかれていた丹羽氏は、苔さんぽの仕掛け人ともいえる。東日本大震災後の奥入瀬周辺で新たな観光資源を探しているときに、苔の魅力に開眼した。「地元の人たちも苔の魅力には気づいていなかったようなので、入社してすぐに『星野(佳路)代表、苔やりましょう!』という感じで提案しました」と笑う。

奥入瀬渓流ホテルでアクティビティ支配人を務める丹羽裕之氏は、奥入瀬渓流で生育する苔をはじめ、さまざまな動植物を把握している
奥入瀬渓流ホテルでアクティビティ支配人を務める丹羽裕之氏は、奥入瀬渓流で生育する苔をはじめ、さまざまな動植物を把握している

 奥入瀬渓流一帯は、落葉広葉樹が中心だ。毎年葉を落とす落葉広葉樹は寿命が短い分、光を一気に取り込む必要があり、葉が薄い。そのため、地上まで光が届くので森全体が明るく、同じ森でも、例えば西表島のいかにもジャングルのような密林とは異なる印象だ。そんな森の中を各自ルーペを手に、丹羽氏の解説を聞きながら歩く。

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