星野リゾート各施設での魅力開発について、今回はコロナ禍にもかかわらず京都で一挙に3施設の開業となった「OMO(おも)」の取り組みを紹介する。日本最大の観光激戦区である京都は“魅力の宝庫”でもあるが、その半面、新味を打ち出すのも難しい。しかも開業までの時間もわずか……。独自の魅力開発にOMOはいかなるアプローチで迫るのか。

京都の発展を導いた高瀬川の開削にちなみ「つるはし」を手にする、星野リゾート OMO京都エリア総支配人の唐澤武彦氏
京都の発展を導いた高瀬川の開削にちなみ「つるはし」を手にする、星野リゾート OMO京都エリア総支配人の唐澤武彦氏

突然の開業、「OMO」だからできた京都3施設

 「星のや」「リゾナーレ」「界」に続く、星野リゾート第4のブランドとして2018年に誕生した「OMO」は、「寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市観光ホテル」がコンセプト。ホテル近隣のお薦め情報を提供する「ご近所マップ」、スタッフが街歩きを紹介する「ご近所ガイド OMOレンジャー」など、ホテルステイのみならずディープなご当地体験も売りにする。施設内にアクティビティを設けるのではなく、街そのものをアクティビティの場とし、魅力あるコンテンツに仕立ててしまおうというスタイルだ。

 これまで「OMO7旭川」「OMO5東京大塚」の2施設を運営してきたが、21年には京都で3施設の開業を発表し、大きな話題を呼んだ。それも、22年に3施設目として開業を予定していた「OMO7大阪新今宮」を追い抜いての、まさに“サプライズ”な開業である。

 今回、新たに開業が決まったのは「OMO3京都東寺」「OMO5京都三条」「OMO5京都祇園」の3施設。東寺と三条は21年4月15日に開業し、祇園は同年11月の開業を予定している。ちなみに、施設名の数字は提供サービスや設備の幅を示し、数字が大きいほどその幅も広くなる。豪華設備は求めず気軽に宿泊を楽しむならOMO3、大浴場やレストランなどフルスペックを望むならOMO7という具合だ。

東寺の東、油小路通(国道1号線)に面して立つ「星野リゾート OMO3京都東寺」は客室数120室
東寺の東、油小路通(国道1号線)に面して立つ「星野リゾート OMO3京都東寺」は客室数120室

 京都の3施設は新築案件ではなく、いずれもコロナ禍で撤退に追い込まれた施設の運営を、星野リゾートが引き継いだもの。東寺の施設は1年弱の稼働、三条の施設はわずか2カ月の稼働で休館となり、祇園の施設に至っては建設着工目前で開業を断念したというから、観光業への新型コロナウイルス感染拡大の打撃がいかに深刻だったかがうかがえる。

OMO3京都東寺のエントランスでは、東寺で見られる仏像をテーマにした「まんだらアート」が出迎える
OMO3京都東寺のエントランスでは、東寺で見られる仏像をテーマにした「まんだらアート」が出迎える

 東寺および三条のOMOは、開業プロジェクトチームの発足から開業までの期間が約半年しかなかった。しかし建物がほぼ新築だったこともあり、基本的にはロビーを改装し、一部の客室に手を入れることで何とか開業にこぎ着けた。あえてコロナ禍で開業したのは、オーナーサイドの意向によるという。

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