九州における星野リゾートの2番目の施設であり、温泉旅館ブランド「界」の17番目の施設として、2021年1月29日に鹿児島県で開業した「界 霧島」。「界」は同社の中でも特に“ご当地感”を重視するブランドだ。魅力開発に対する取り組みは、地域再発見の取り組みでもある。
目指すはスタッフの数=魅力の数
「界 霧島」は、「桜島をはるかに見渡し、湯浴(あ)み小屋でうるおう宿」がコンセプト。全49室のすべての部屋から霧島高原と、錦江湾に浮かぶ桜島や霧島連山のダイナミックな景観が一望できる。地元の人でもなかなか目にしない光景といわれ、誰もが客室に入った瞬間に感嘆の声を上げるのは必至の景観である。界には他にも、オーシャンビューの「界 アンジン(静岡県伊東市)」や「界 別府(大分県別府市)」のように風景自慢の施設はある。だが、全18施設の中で「絶景」をうたうのは界 霧島だけだ。
コンセプトに登場するもう1つの「湯浴み小屋」、つまり大浴場に関しても、界 霧島は少々風変わりだ。この施設の宿泊棟は、天孫降臨神話の舞台である高千穂峰の中腹、標高約650メートルの斜面に立つが、大浴場は宿泊棟から50メートルほど下のススキ野原にたたずむのである。そのため、湯浴み小屋へ行くには宿泊棟を出て「スロープカー」に乗って下まで移動する必要がある。かなり大掛かりな“仕掛け”だが、これは部屋から見た景色と50メートル下の景色との違いを体感してもらうのが目的だ。
湯浴み小屋はススキ野原にある唯一の構造物で、内部は木の梁(はり)を生かし、チョロチョロ流れる湯音の反響も考慮して建てられている。浴場の混雑状況をスマホで確認できるのに加え、露天風呂を備えた部屋が19室あり、そちらを使う宿泊客も多いため、密を避けるのはさほど難しくはない。
温泉が売りのブランドだけに、界では現在、全施設で「うるはし現代湯治」なるプロジェクトを進めている。本来の湯治とは、温泉地に2~3カ月ほど逗留(とうりゅう)し、1日に何度も入浴を繰り返して肌質や体質を改善していくもの。だが今の世の中、多くの人にとってそのような滞在は夢のまた夢。「そこで、忙しい現代のライフスタイルに合わせて、1泊2日の滞在で免疫力を高め、活力を養うことを目的に開発したのが『うるはし現代湯治』です」と、界 霧島の永田淑子総支配人は話す。
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