前回に引き続き、「星野リゾート 西表島ホテル」の魅力開発に関する現地スタッフの取り組みを紹介する。地域と連携したホテル運営は星野リゾートの施設全体を通した共通の特徴だが、離島にある西表島ホテルはより一層その傾向が強い。

「星野リゾート 西表島ホテル」の細川正孝総支配人。手にしているのは精巧に作られたイリオモテヤマネコの模型
「星野リゾート 西表島ホテル」の細川正孝総支配人。手にしているのは精巧に作られたイリオモテヤマネコの模型
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島の象徴、イリオモテヤマネコを守れ!

 西表島と聞けば誰の頭にも浮かぶと思われるのが「イリオモテヤマネコ」だ。「星野リゾート 西表島ホテル」では、国の特別天然記念物に指定され、絶滅危惧種としてレッドリストにも記載されているこの動物の保護活動を、エコツーリズムリゾートの3本柱の1つに挙げている。西表島の食物連鎖の頂点に立つイリオモテヤマネコは、島の生態系を支える存在。その数が減少すれば、世界自然遺産登録の理由でもある貴重な生態系が崩れることは必至だ。

 近年、イリオモテヤマネコに関して最大の問題となっているのが自動車での交通事故、いわゆる「ロードキル」問題だ。データを取り始めた1978年からの事故件数は、島民や観光客の増加に比例して増え、2018年には過去最悪の9件に達した。現在、推定生息数が約100頭なので、ほぼ1割に相当する。20年は新型コロナウイルスの影響で観光客や島民の移動が抑えられたこともあり、事故は0件だった。しかし21年は4月、6月、7月、8月にそれぞれ1件、合計4件発生している。生息数が100頭を下回ると減少が加速するといわれているため、その保護は急務だ。

“島の名士”さながらに、島内では2カ所にイリオモテヤマネコの銅像が設置されている
“島の名士”さながらに、島内では2カ所にイリオモテヤマネコの銅像が設置されている
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 保護活動といっても、島民でもめったに目にしない神秘的な動物だけに、個体を捕獲して特定の施設で保護するのではなく、ロードキル防止が一番の主眼となる。やはり野生動物は野生のまま、共存しながら保護するのが本来の姿。もともと、れっきとした“島の住民”なのである。約90%がジャングルの島だけに生息地は島全域にわたり、当然、島民たちの生活エリアとも重複する。特に田畑にはイリオモテヤマネコの好む小動物が多い。

 そのため、西表島では環境省や自治体、島民を中心にロードキル対策を行っている。ドライバーに注意を促す看板、道路への進入抑制柵、路面の凹凸が発する音で車の存在を知らせるゼブラゾーン(振音舗装)、道路下に設けられたイリオモテヤマネコ用のトンネルの設置、さらに道路での時速40キロメートル制限などだ。環境省が毎月、特に注意を要する場所を発表し、姿や事故を目撃した際の緊急ダイヤルも開設した。事故発生時は町内に有線放送が流れ、関係各所に連絡がいくシステムも確立されている。まさにイリオモテヤマネコの保護に総力を挙げている状態だが、それでも事故が後を絶たない原因の1つは、車にひかれたヘビやカエルを食べに、道路に出てくるヤマネコが多いからだ。

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