星野リゾート代表の星野佳路氏が「星野温泉旅館」という旧態依然とした組織を「星野リゾート」というフラットな組織へと転換できたのは、人材難の危機を新たな人材獲得のチャンスととらえたからだった。意外にも“右も左も分からない”新卒の採用に踏み切ったことがフラットな組織文化を醸成する契機となった。
履歴書を見る前にまず説得
31歳の若さで星野温泉旅館を父から引き継ぎ、古い経営陣を一掃した星野氏。しかし、なかなか働き手が集まらず、人材難にあえぐ日々は変わらなかった。「旅館を継いでからの10年間は軽井沢の運営に集中し、リクルーティングをはじめ会社の体制を整えるために必死だった」と星野氏は振り返る。
星野佳路代表(以下、星野) 私が新卒採用に注力したのは、新卒は最初から、ある意味フラットだからです。彼らはサークル活動やアルバイトの経験しかないので、企業の“変な常識”を知りません。先輩・後輩の関係は知っていても、上司・部下の関係などは知らない。だからこそ、この会社には役割はあっても“偉い人”はいないし、言いたいことは何でも言える企業文化なのだということが浸透しやすいと思ったのです。
しかし「株式会社星野温泉旅館」といったところで、しょせんは地方の小さな旅館です。新卒募集を始めた最初の年は応募者はゼロ。2年目に2人の応募がありましたが、とにかく入社してもらうのに必死でした。相手の自己紹介を聞く前に説得を始め、さんざん話し終えてから、最後に履歴書を見せてもらうという始末でしたから。おかげで2人とも入社してくれて、そのうちの1人は現在も在籍しています。
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