星野リゾート代表の星野佳路氏が、建築家の東利恵氏(東環境・建築研究所代表)と同様に信頼を置いているクリエイターが、オンサイト計画設計事務所代表のランドスケープアーキテクト・長谷川浩己氏だ。星野リゾートの草創期から「星のや」に関わってきた長谷川氏は、景観デザインのスペシャリスト。2回にわたりそのデザイン論をお届けする。
オンサイト計画設計事務所代表取締役、武蔵野美術大学特任教授
【第10回】 「星野流デザイン」の源流 星野リゾートのデザイン戦略(2)
【第11回】 クリエイターとやり合う日々 星野リゾートのデザイン戦略(3)
【第12回】 最新こそ最良であるべきだ 星野リゾートのデザイン戦略(4)
【第13回】 「西洋文化にこびないで」 星野リゾート、建築家の視点(1)
【第14回】 「一発当ててやる」はだめ 星野リゾート、建築家の視点(2)
【第15回】 チームそのものがブランド 星野リゾート、建築家の視点(3)
快適に過ごせる“居場所”をデザイン
オンサイト計画設計事務所代表の長谷川浩己氏は、ランドスケープアーキテクトとして「星のや」以外でも、公園や駅前の広場、大学のキャンパスなどのデザインを手がけている。「景観をデザイン」と一口に言うが、そもそもランドスケープアーキテクトはどのような仕事で、星野リゾートの施設デザインにおいてどんな役割を担うのか。
長谷川浩己氏(以下、長谷川) 私が星野リゾートの仕事に参加するようになったのは、20年ほど前に軽井沢で「トンボの湯」の整備が始まったときです。単に温泉施設の整備だけでなく、軽井沢エリアという大きい敷地を“面”として刷新することになり、ランドスケープのデザイナーが必要とのことで、建築家の東利恵(東環境・建築研究所代表)さんから声をかけていただきました。私の事務所のパートナーが大学時代に東さんと知り合いだったこともあり、彼にきた話が私に回ってきた格好です。
大まかに言えば、ランドスケープアーキテクトの仕事はそのエリアの新しい風景をつくること。どのような建物をどのように配置し、建築を風景の中にどのように落とし込むかという配置計画に始まり、建物や植栽、水、道路、駐車場、動線などをコーディネートし、人が快適に過ごせる居場所をデザインします。その後、一般の建築と同じように実施設計を行い、現場の管理をしつつ竣工までもっていく。モノをつくるというよりは、建物や木など各要素の関係性というか、エリアの全体像をつくる仕事ですね。
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