コロナ禍で倒産に追い込まれるホテルや旅館が増えているなか、3密回避の徹底とマイクロツーリズムを提唱する星野リゾートは、2020年6月の県外移動自粛解除以降、各施設で次第に顧客を取り戻しつつある。同社のコロナ対策について、温泉旅館「星野リゾート 青森屋」の取り組みを紹介する。

3つの宿泊棟と広大な公園からなる「星野リゾート 青森屋」は、星野リゾートの中でも大規模な施設だ
3つの宿泊棟と広大な公園からなる「星野リゾート 青森屋」は、星野リゾートの中でも大規模な施設だ

現場でも生まれた「ニューノーマル」

 青森県三沢市にある「星野リゾート 青森屋」は、「星のや」「リゾナーレ」「界」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」など、星野リゾートが展開するサブブランドからは独立し、独自のスタイルで運営されている施設だ。コンセプトは「のれそれ青森~ひとものがたり~」。「のれそれ」とは青森の方言で、「目いっぱい」「思い切り」という意味だ。

 青森屋は「祭り」をテーマとし、ねぶた祭をはじめとする郷土の祭り装飾が館内を彩る。さらに津軽三味線やスタッフによる青森四大祭りのショーなど、青森文化を伝えるサービスやコンテンツが大きな売りとなっている。祭りという郷土色の濃いテーマを大切にしていることもあってか、各施設で地域らしさを打ち出す星野リゾートの中でも、とりわけご当地らしさが感じられる施設だ。

おはやしが流れ、金魚ねぷたがずらりと並ぶ館内はもはやテーマパーク。冬期はりんごねぷたに変わる
おはやしが流れ、金魚ねぷたがずらりと並ぶ館内はもはやテーマパーク。冬期はりんごねぷたに変わる

 ところが新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ点では、この「祭り」が大きなネックとなった。言うまでもなく、クラスター発生のリスクが高いためだ。他の施設同様、青森屋でも検温や手指の消毒、マスク着用、飛沫感染防止フィルム、新ノーマルビュッフェ、ネットを活用した大浴場の混雑の可視化といった3密対策は徹底している。2020年4月には送迎バス、5月にはショーを中止にした。さらに「『祭り』という言葉も使わないようにしました」と話すのは、青森屋の岡本真吾総支配人。

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