新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、あらゆる場面で3密回避が重要視されている。だが、ただ回避するだけでは経済活動はままならない。withコロナの時代だからこそ生まれるサービスもある。星野リゾートでも大浴場の3密回避に向けた新サービスが誕生した。(取材日は2020年7月3日)
混雑状況をスマホでチェック
星野リゾートのサブブランドの1つである温泉旅館の「界」は、「王道なのに、あたらしい。」がテーマ。これまでの日本にはなかった全国展開の温泉旅館ブランドとして勢いを増している。当然、温泉は同施設の大きなウリだ。しかし大浴場は3密になりやすい。そこで星野リゾートでは、「界」「星のや軽井沢」「リゾナーレ熱海」などの15施設で、スマートフォンで大浴場の混雑状況を把握できるシステムを導入した。
星野佳路代表(以下、星野) 界などの温泉旅館の場合、食事はビュッフェではないので3密になりにくい。3密の恐れが生じるのは、主にチェックイン時とチェックアウト時です。しかしこれらの手続きは客室で済ませることもできますし、スタッフとの近距離の接触を避けたり、入列規制をしたりすれば、3密回避はそれほど難しくありません。唯一難しかったのが大浴場でした。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束するまでは、お客様も自ら密を避けようとしています。それなら、大浴場の混み具合の情報を提供すれば、密を回避できるのではないかと考え、混雑状況をスマートフォンで確認できるシステムを開発しました。これは現在の大浴場の利用状況を「空いている」「中ぐらい」「混雑」の3段階で可視化したもので、「混雑しているので入らないでください」と規制するのではなく、「情報を提供するのでご自身で判断してください」というのが基本スタンスです。かなり評判がいいので、アフターコロナでも残すかもしれません。
このシステムを発想したのは20年4月ごろで、導入は6月です。これほどのスピード感で実現できたのは自社開発だからです。星野リゾートでは日ごろからインターネット予約の仕組みなど、多くのシステム関連のプロジェクトが動いています。しかし、新型コロナウイルス問題が起きたため、経費節約を兼ねてほぼ全てのプロジェクトを延期しました。その結果、手の空いたシステム関連の人員を、このサービスの開発に振り向けることができたのです。
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