建築家の東利恵氏(東環境・建築研究所代表)が設計する「星のや」は、発表のたびに大きな注目を集める。そのデザインが星のやの評判を高めると同時に、東氏にも新たな成長をもたらす。互いの存在によってそれぞれを高め合っている関係が、そこにはある。
【第10回】 「星野流デザイン」の源流 星野リゾートのデザイン戦略(2)
【第11回】 クリエイターとやり合う日々 星野リゾートのデザイン戦略(3)
【第12回】 最新こそ最良であるべきだ 星野リゾートのデザイン戦略(4)
【第13回】 「西洋文化にこびないで」 星野リゾート、建築家の視点(1)
【第14回】 「一発当ててやる」はだめ 星野リゾート、建築家の視点(2)
星のや東京のコンセプト
星野リゾート代表の星野佳路氏が、海外で日本旅館を展開するのを見据えて2016年に開業した「星のや東京」。ここでも東氏の手腕はいかんなく発揮されている。この施設を特徴付ける「お茶の間ラウンジ」は、星野氏と東氏の意見の“キャッチボール”で生まれた。
東利恵氏(以下、東) 星のや東京のテーマを日本旅館にすると決まってから、私が提案したのが「靴を脱ぐこと」でした。星野さんも米国留学の経験があるのでお分かりだと思いますが、米国でも案外靴を脱ぐ人が多いんです。特に私たちがいたニューヨーク州のイサカは雪の多い地域で、家では雪靴を脱いでスリッパや室内履きなどに履き替える人が結構いました。だから、恐らく靴を脱ぐことに大きな抵抗感はないだろうと。
日本のくつろぎの一歩は靴を脱ぐことから始まる、という点では意見は一致しました。では、いったいどうやってその靴をコントロールするかが、次の課題として浮かび上がってきました。当初はAmazonの倉庫のようにタグを付けて保管し、宿泊客が外出する際に、靴が自動で運ばれてくる仕掛けをと冗談で話していましたが、最終的に靴箱をインテリアとしてつくることに決めました。母方のいとこが薬問屋だった祖父から受け継いだ薬箪笥をインテリアとして使用していたので、そこからヒントを得たのです。
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