星野リゾートの施設デザインに関し、代表の星野佳路氏が絶大な信頼を寄せている建築家の1人が、「星のや」の設計・建築を手がける東利恵氏(東環境・建築研究所代表)だ。「星のや軽井沢」をはじめ、すべての星のやのデザインを手がけた東氏のデザイン論を、3回にわたってお届けする。

東環境・建築研究所代表の東利恵氏
東環境・建築研究所代表の東利恵氏
東 利恵(あずま りえ)氏
建築家/東 環境・建築研究所代表取締役
1959年大阪生まれ。82年日本女子大学家政学部住居学科卒業。84年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。86年コーネル大学建築学科大学院修了後、東環境・建築研究所代表取締役

初めての設計料は「とんかつ定食」

 星野リゾート代表の星野佳路氏と東利恵氏は、米国コーネル大学大学院時代の同級生。星野氏はホテルスクール、東氏は建築学科と学科は異なるが、同じ日本からの留学生として「仲よかった」と東氏が当時を振り返る。


東利恵氏(以下、東) 大学院ではお互い忙しかったので、それほどしょっちゅう会っていたわけではありませんが、特に日本語や日本食が恋しくなったときは、よく連絡をしていました。コーネル大学は日本人がその頃少なかったんですね。車で1時弱の場所に、当時この辺りでは唯一の日本食レストランがあったので、星野さんに“アッシー君”と言ったら怒られますが、車で連れていってもらったものです。

 日本では中学校まで公立の学校に通っていた私は、貧乏(?)建築家の娘でいたって庶民。かたや星野さんは慶應義塾大学出身の温泉旅館の息子さん。私の自宅は父(建築家の東孝光氏)の設計した「塔の家」だったので見学者も多く、小さな頃から建築ばかりの生活でした。一方の星野さんは、小さい頃からアイスホッケー三昧の体育会系。2人の背景はかなり違っていました。しかし彼は知ったかぶりをいっさいせず、知らないことに対しては興味津々で、いろいろなことを聞いてくる。私は全く知らなかったアイスホッケーやスポーツについて教わったり、星野さんの旅館の写真などを見せてもらったりしていました。お互いに知らない経験や知識の交換をしているような感じでした。

 大学院時代は、まさか将来星野さんから仕事を依頼されることになるとは思ってもいませんでしたが、一度、ホテルスクールの課題を手伝ったことがあります。1つのホテルのコンセプトから収支・採算までをプロデュースし、リポートにまとめるという課題で、ホテルのイメージを付けたいからと、設計を頼まれました。1日でできる簡単な設計でしたが、設計料は「とんかつ定食」でした。

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