星野リゾートで「星のや」ブランドのデザイン担当は、東環境・建築研究所の建築家・東利恵氏とオンサイト計画設計事務所のランドスケープアーキテクト・長谷川浩己氏だ。いいものをつくるために妥協しない2人は星野リゾート代表の星野佳路氏とは軽井沢時代以来の友人であり、良きパートナーでもある。
豊かな空間のため、あえて妥協することも
星野流デザインは、軽井沢時代からチームを組む建築家の東利恵氏、ランドスケープアーキテクトの長谷川浩己氏との議論の重ね合いにより生まれた。特に米国留学時代から親交のある東氏とは、「長年一緒に仕事をしてきたが、今でも頻繁に意見がぶつかる」と星野氏。いい空間をつくるために一歩も引かない東氏のその姿勢こそが、星野氏の信頼を勝ち得てきた理由でもある。
星野佳路代表(以下、星野) 私にとって「いいデザイン」とは、流行に左右されず、いつまでも魅力的な空間であり続けるデザインです。百貨店のインテリアデザインなどは、大抵2~3年くらいの間隔でリニューアルをして投資回収するものなので、流行に乗っても構わない。しかしホテルや旅館は10年、20年をかけて回収する長期投資の施設で、いったん建てたものを数年で壊し、また新しいものをつくるというわけにはいきません。20年たっても堪え得るデザインでなければならないので、本質的な空間の豊かさが求められます。「星のや軽井沢」は2005年の開業から既に15年経過していますが、現在でも業績を上げ続けています。それは豊かな空間があって初めて実現できるのです。
一般に施設側の人間は、実用面から「ここにテーブルを置きたい。あそこに壁をつくろう」などと言いがちです。ところが東さんや長谷川さんたちにとって壁や家具調度は、あくまで空間を構成するための道具。私たちが「ここにテーブルを置きたい」というのは、彼らからすれば空間を変えるということになります。許容できない場合もあるでしょう。
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