※日経トレンディ 2020年4月号の記事を再構成

森岡流「地方創生術」、その意義と秘策に迫る3回目。刀にとって、初めての地方テーマパークでの成功例が兵庫県三木市のネスタリゾート神戸(旧グリーンピア三木)だ。僅か1年で客数2倍、売り上げは3倍近くに増加。経営破綻した“負の遺産”を立て直し、「何も無い」を価値に変えた秘策は何か。

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施設内の「何も無い」を「すべてある」に転換。「大自然に勝てる遊び場なんて、ない」と文脈を設定し、「大自然の冒険テーマパーク」を顔にした

 2018年、日本初の「大自然の冒険テーマパーク」と銘打って、再スタートを切ったのが、兵庫県三木市の山中に広がるネスタリゾート神戸だ。1年後には客数約2倍、売り上げに至っては3倍近くに増加。「刀」にとっては、初めての地方テーマパークでの成功例だ。

 この施設の前身は、1980年代に年金福祉事業団が整備した大規模保養施設の一つ、グリーンピア三木。阪神甲子園球場約90個分という広大な敷地に、豪華なホテルやテニス場、プール、野球場などが設けられていた。しかし利用者が伸びず、2000年代に入り経営が破綻。「保険料の無駄遣い」と批判を受けた。その後、いったん兵庫県が引き受けた後、レジャー産業を展開する延田エンタープライズが買い取り、16年夏、ネスタリゾート神戸として新装オープンした。

 敷地内は徐々に整備されたが、破綻した施設の立て直しは容易ではない。そして18年春、“負の遺産”の本格的な再生が森岡毅氏に託される。「山林に囲まれた人口8万人弱の市に残る巨大な施設。これを失えば地域の経済的な損失は大きいし、逆に持続可能な事業に転換できれば、関西全体にもたらす効果が大きい」。そう判断した森岡氏は、この仕事を受けることを決意した。

 森岡氏率いる刀チームが描いた再生への道筋は、「日帰り客を増やすこと」だった。消費者に選ばれる施設とするには、ここもやはり「顔」とすべき際立った特徴が見当たらなかった。

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