※日経トレンディ 2020年4月号の記事を再構成

USJを全国区に押し上げた森岡毅氏が率いる、マーケティング精鋭集団「刀」。エンタメビジネスはいわばお家芸だ。刀が指し示す、持続可能な地方創生事業の成功モデルとは何か。その意義と秘策を探る特集の1回目は、地方を元気にするための集客施設づくりにおける3箇条を明らかにする。

森岡 毅氏
戦略家・マーケター
マーケティング会社「刀」の代表CEO
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)を経て、2010年から僅か数年で、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)経営再建を果たす。17年に独立し、刀を設立。以来、丸亀製麺と協業してV字回復に導くなど、多くの実績を重ねている

 2020年1月30日、USJ再建の立役者・森岡毅氏が率いるマーケティング会社「刀」が、大和証券グループ本社との資本業務提携を発表した。壇上の森岡氏は、両者が手を組んだ意義を、熱く次のように語った。

 「我々の想いは純粋で、その地域にとって掛け替えのない、持続可能な事業を生み出し、地方創生へと導くこと。望みは、ただそれだけです。『地方』という言葉はあまり好きではありませんが、地域の人々に誇りに思ってもらえたとき、我々の事業は初めて意味を持つでしょう。そうなるべく、刀のノウハウのすべてを生かしていきます」

 大和証券グループ本社から、経営権に影響の無い出資で140億円の資金を調達した刀は、まずは創業時から着々と準備を進めてきた、沖縄北部にテーマパークを建設する事業に30億円を投入。大自然の魅力を体感できる集客施設の実現に向けてアクセルを踏み込んだ。

 USJを全国区に押し上げた森岡氏が率いる刀にとって、テーマパークをはじめとするエンターテインメントビジネスは、“お家芸”ともいえる。計画中の沖縄の他、既にネスタリゾート神戸(兵庫県三木市、旧グリーンピア三木)と、西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市)の再生を手掛けており、さらに横浜市のIR事業への参画を目指す。

 テーマパークが地方創生に結び付く理由を森岡氏は、「観光事業における、人を動かす装置として実に有効ですから」と明快に言い切る。

 「地方に魅力的なテーマパークができて東京や大阪から人が行くようになれば、それだけ経済が動くわけです。そしてエンターテインメントというものは、どの地域においても、その土地柄を生かした切り口を必ず見つけられる。我々としては、その土地の特徴や地域文化を生かした価値を新たに生み出すことによって、人が集まってくる構造をつくりたい。そうすれば、持続可能な地方創生事業の成功モデルを示すことができますから」

 それはまた、刀が社是として掲げる「日本をマーケティングで元気にする」という大義にかなう、と森岡氏は言う。

 「人と金が動く構造を客観的に考えれば、東京や大阪以外の地域が元気になった方が、日本にとって明るい未来が開けているのは明らかです。今後は地方創生の根幹を生む事業に、より注力していきたいと考えています」