新型コロナウイルス禍で増加した“おうち時間”。そうした状況を受け、お酒好きを中心に自宅で作る薫製料理にも関心が集まった。火を付けたのはパナソニックの「スモーク&ロースター けむらん亭」。煙が出ないので屋内でも手軽に薫製作りが楽しめる。初代モデルの販売数は10万台を突破。同社は2022年3月に新モデルを投入した。その実力やいかに。

40歳代の“家飲み”夫婦をターゲットに開発

 お酒好きなら一度はやってみたい「薫製作り」。筆者もガスコンロの上で手軽に行える「熱燻(ねっくん)」専用の容器を購入し、自宅で挑戦したことがあった。当時、部屋の換気扇をぶん回してマンション中に煙を垂れ流し、大家に叱られるという大失敗をやらかしたものの、仕上がりはなかなかのものだった。

 そうなると、一戸建てでも住宅が密集した住宅地では薫製作りには厳しく、キャンプなどアウトドアで楽しむものという認識ではないだろうか。しかし実は、マンションやアパートなどでも、誰にも迷惑をかけずに薫製作りを楽しめる家電が数年前から登場している。その1つが、パナソニックの「スモーク&ロースター けむらん亭」だ。今回はそのけむらん亭を使って、薫製作りにチャレンジしてみることにした。

パナソニックが2022年3月に発売した「スモーク&ロースター けむらん亭 NF-RT1100」(実勢価格4万2680円、税込み)
パナソニックが2022年3月に発売した「スモーク&ロースター けむらん亭 NF-RT1100」(実勢価格4万2680円、税込み)

 けむらん亭は魚を焼く「フィッシュロースター」をベースに、薫製作りができるようにした製品だ。パナソニックは初代モデルの「NF-RT1000」を2015年9月に発売。今回紹介するNF-RT1100は、約6年半ぶりにリニューアルした第2世代モデルとなる。

 初代モデルの開発経緯について、パナソニック アプライアンス社の小谷香織氏は次のように語る。

 「当時、自宅でリラックスしながら自分の好みのお酒を味わう“家飲み”の意向が高まり、家飲み関連商品への注目も高まっていた。そこでおつまみとして人気が高い薫製に着目した。除煙性能があるロースターだからこそ、薫製を提案する価値があるのではないかと考え搭載を検討。実際に薫製作りをしている方々にアンケートを採ると『屋外に設置しないといけない』『室内では煙が気になる』などの不満点も多かったため、電化製品で提案できる可能性を感じ、開発に着手した」

 コアターゲットは「40歳代の“家飲み”夫婦」だ。パナソニックが行った当時の調査によると、薫製を楽しむ人の約8割がお酒と一緒に楽しんでいた。この製品も、自宅でお酒を飲む人に親和性が高いと考えた。

 初代モデルは発売以来10万台以上を販売した。「業界初の薫製ができるロースターとして多くのメディアに取り上げていただいただけでなく、他メーカーからも薫製機が多数発売されたこともあり、市場開拓の一端を担えたと考えている」(小谷氏)。

煙を分解する触媒によって自宅での薫製作りを実現

 けむらん亭はガラス窓が付いた引き出しを手前に引くと焼き網が現れる。網の上で肉や魚などを焼くこともできるが、その上に専用の薫製容器を置くことで薫製調理ができるようになっている。

けむらん亭のドアを引き出したところ。上には焼き網、下には汁受け皿を配置する、電気フィッシュロースターの定番といった作りだ。写真では見えないが、上には遠赤ブラックヒーター、焼き網の下にはシーズヒーターを配置している
けむらん亭のドアを引き出したところ。上には焼き網、下には汁受け皿を配置する、電気フィッシュロースターの定番といった作りだ。写真では見えないが、上には遠赤ブラックヒーター、焼き網の下にはシーズヒーターを配置している

 庫内奥に触媒を搭載しており、ファンによって集められた煙を触媒で水と二酸化炭素に分解して排出する。煙はもちろんのこと、臭いもほとんど出ないのが特徴だ。

 薫製には薫製調理する温度帯で「熱燻」(セ氏80~140度程度)、「温燻(おんくん)」(セ氏30~80度程度)、「冷燻(れいくん)」(セ氏15~30度程度)という3種類があるが、けむらん亭は短時間で調理できる「熱燻」にのみ対応している。本格的な温燻や、生ハム作りなどができる上級者向けの冷燻には対応しないものの、河原などで行うドラム缶薫製とほぼ同じ調理を自宅で行えるのが魅力だ。

 初代モデルは薫製調理する温度は1つだけだったが、新モデルでは従来と同じ「強め」に加えて「弱め」の設定ができるようになった。「RT1000を購入していただいたお客様から、『薫製をもっと自分好みに調整したい』『カマンベールなど多様なチーズも薫製したい』との要望をいただき、開発に至った」(小谷氏)と言う。

 ほんのりとした薫香を付けられるようになっただけでなく、調味料の薫製ができるようになったのも大きなポイントだ。

「生・姿焼き」や「切身」、「干物」といったオートメニューのほかに、「くんせい」メニューを搭載。薫製モードは新たに「強め」と「弱め」の設定ができるようになった(従来モデルは1モードのみ)
「生・姿焼き」や「切身」、「干物」といったオートメニューのほかに、「くんせい」メニューを搭載。薫製モードは新たに「強め」と「弱め」の設定ができるようになった(従来モデルは1モードのみ)

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