2015年に「BALMUDA The Toaster」を投入し、キッチン家電に参入したバルミューダから21年10月7日、コーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」が登場した。パンと親和性の高いコーヒーメーカーを作ることは、トースターを大ヒットさせた同社にとって大きな意味がある。その出来栄えを検証した。

バルミューダが発売した「BALMUDA The Brew」(写真中央、税込み直販価格5万9400円)。写真左はオーブンレンジ「BALMUDA The Range」で、右はトースター「BALMUDA The Toaster」
バルミューダが発売した「BALMUDA The Brew」(写真中央、税込み直販価格5万9400円)。写真左はオーブンレンジ「BALMUDA The Range」で、右はトースター「BALMUDA The Toaster」

スリムな「オープンドリップタイプ」で登場

 ついに登場した「BALMUDA The Brew(バルミューダ ザ・ブリュー、以下The Brew)」。税込み5万9400円という高価格帯ながら、豆を挽(ひ)くコーヒーミル搭載の全自動タイプではなく、本体にセットしたドリッパーやその中のコーヒー粉、ドリップしている様子がよく見える「オープンドリップタイプ」のドリップコーヒーメーカーとして姿を現した。

 実は今からちょうど5年前(2016年)、トースターに続いて電気ケトル「BALMUDA The Pot」を発表した際、バルミューダの寺尾玄社長は炊飯器、オーブンレンジ、コーヒーメーカーと続くキッチン家電のロードマップを示していた。しかし実際には17年2月発売の「BALMUDA The Gohan」、17年11月発売のオーブンレンジ「BALMUDA The Range」までは順調だったものの、コーヒーメーカーはそこから4年を要した。その時の長さに、バルミューダらしいユーザー体験を生み出すための苦心がうかがえる。

2016年9月に実施したBALMUDA The Potのプレス向け体験会で発表されたキッチン家電のロードマップ
2016年9月に実施したBALMUDA The Potのプレス向け体験会で発表されたキッチン家電のロードマップ

 The Brewは、一見したところ本体の幅140ミリ、高さ379ミリ(取っ手を含む)とかなりスリム。サーバーには真空ステンレスサーバーを採用し、本体にもステンレスをあしらうなど、高級感のある落ち着いたデザインだ。コーヒーミルは内蔵していないが、別売りで22段階の挽き目調節が可能なハンドミル「Coffee Mill」(価格未定)も21年12月に発売を予定している。

The Brewはオープンドリップタイプを採用
The Brewはオープンドリップタイプを採用

 ドリップコーヒーメーカーとして最も重要なのは、やはりドリップ方法だろう。The Brewは蒸らし、抽出、仕上げと、その工程ごとに最適になるようお湯の温度を調節し、0.2ミリリットル単位で注湯する「Clear Brewing Method」を採用している。さらにユニークなのが、注湯口を2つ搭載している点だ。ドリッパー上部の注湯口はドリップに用いられるが、“第2の注湯口”はステンレスサーバーに直接注湯するようになっている。これにより、スチームでステンレスサーバーを事前に温めるだけでなく、コーヒーをドリップした後に直接ステンレスサーバーにお湯を注ぐ「バイパス注湯」を実現している。

第1の注湯口からドリッパーにお湯を注ぐ(赤丸部分)
第1の注湯口からドリッパーにお湯を注ぐ(赤丸部分)
サーバーに直接スチームやお湯を注ぐ第2の注湯口から「バイパス注湯」をしているところ(赤丸部分)
サーバーに直接スチームやお湯を注ぐ第2の注湯口から「バイパス注湯」をしているところ(赤丸部分)

 抽出モードはホットコーヒー用の「REGULAR」と「STRONG」に加えて、アイスコーヒー用の「ICED」を搭載。すっきりとした後味のREGULARにのみ、バイパス注湯を行う仕組みだ。

本体上部にある操作部。3つのモードを備えている
本体上部にある操作部。3つのモードを備えている

光や音の演出にもバルミューダらしさが見える

 早速、REGULARでコーヒーを作ってみよう。ドリッパー内のコーヒーフィルターに付属の計量スプーンでコーヒー粉を入れ、ドリッパーを本体にセットする。ドリッパースタンドが付属しているので、安定した状態でコーヒー粉を入れられるのはなかなかいい。

ドリッパースタンドが付属しているので、安定した状態でコーヒー粉を入れられる
ドリッパースタンドが付属しているので、安定した状態でコーヒー粉を入れられる

 電源をオンにすると、パソコンの起動音にも似た音が鳴り、オレンジ色のLEDランプがともり始める。この音を出すために、わざわざスピーカーを内蔵したというのがバルミューダらしい。LEDランプはまるでろうそくの炎のようにちらついたり、揺らいだりするのが面白い。

LEDの光がろうそくのように揺らめくのが面白い
LEDの光がろうそくのように揺らめくのが面白い

 タンクに水を入れてモードとカップ数を選び、スタートボタンを押すと、古時計の振り子をイメージした「カッコッカッコッ」という音が流れ始める。明治時代や大正時代に建てられたモダンな洋館の一室でじっくりコーヒーをいれる……そんなイメージなのかもしれない。

 起動音や操作音へのこだわりはBALMUDA The Rangeでもあったが、動作音にこだわるのはこのモデルが初めてだろう。オープンドリップ式で注湯口にも簡単に触れられるようになっていることもあり、動作中であることをLEDランプだけでなく音でも知らせるようにしているとのことだ。第一印象としてはやや子供だましな感じもしたが、デザインと安全性、ユーザー体験のバランスを考えると納得できる。

タンクに水を入れて本体にセットする
タンクに水を入れて本体にセットする

独自の「バイパス注湯」がバルミューダらしい

 ドリップが始まると、まず注湯口2からステンレスサーバーにスチームが噴出される。The Brewはサーバーを温め直すヒーターを搭載せず、真空断熱ステンレスサーバーを採用している。冬の寒い日に冷たいサーバーにドリップすると、その時点でコーヒーが冷めてしまう。そこで1年を通して安定して温かいコーヒーを楽しめるよう、サーバーを事前に温める工夫としてこの機構を取り入れた。

 続いて注湯口1からのドリップがスタートする。バルミューダが開発した「Clear Brewing Method」では、蒸らしの工程では93度で注ぎ、抽出時には91~92度で爽やかな酸味とキレのある苦味を抽出し、90~91度で甘みを抽出し、82~89度でコクのある苦味を抽出し、最後に86度でバイパス注湯をするとしている(「REGULAR」モードで3杯抽出した場合)。

注湯口1からドリップが始まる
注湯口1からドリップが始まる
注湯口2からバイパス注湯をしているところ
注湯口2からバイパス注湯をしているところ

 バイパス注湯をバルミューダは「新しいアイデア」としている。だが、ドリップコーヒーの技術としては決して新しいものではなく、コーヒー愛好家なら既に行っている人もいる方法だ。ただしコーヒーメーカーでこれを実現する場合、わざわざ通常の注湯口とは別に注湯口を設けなければならないため、これまで採用されることはなかったというのが実情だろう。

 ちなみにこのバイパス注湯は、日本エー・アイ・シー(兵庫県加西市)が21年7月に発表した「アラジン」ブランド初のコーヒーメーカー「アラジン コーヒーブリュワー」(22年春発売予定)に搭載される予定の同社の特許技術「バイパスドリップ」(特許公開番号2019-076678)にかなり似通っているように思えるが、製品への搭載はThe Brewが業界初のようだ。

日本エー・アイ・シーが21年7月に発表した「アラジン」ブランド初のコーヒーメーカー「アラジン コーヒーブリュワー」(22年春発売予定)のドリップ方式(プレスリリースより)
日本エー・アイ・シーが21年7月に発表した「アラジン」ブランド初のコーヒーメーカー「アラジン コーヒーブリュワー」(22年春発売予定)のドリップ方式(プレスリリースより)

間欠的な注湯でハンドドリップのような抽出を実現

 実際にどんな注湯を行っているのか、ドリッパー内の温度を計測することにした。REGULARモードで3杯抽出する間に、ドリッパー内のコーヒー粉に温度計を挿して計測するというやり方だ。

温度計を挿してドリッパー内の温度推移を計測してみた
温度計を挿してドリッパー内の温度推移を計測してみた

 スタートから約1分5秒後に注湯口2から蒸気が出始め、その約10秒後に注湯口1からの注湯がスタートする。最初の蒸らしの注湯直後に約90.5度まで温度が上がり、約30秒の蒸らしの間に92.6度まで達してから徐々に温度が下がる間に2度目の注湯がスタートする。

注湯タイミングとドリッパー内の温度推移。注湯量は厳密ではなく参考値と考えてもらいたい
注湯タイミングとドリッパー内の温度推移。注湯量は厳密ではなく参考値と考えてもらいたい

 最初の段階は4~5秒ほど注湯してから7~8秒ほど待つというペースでゆっくりドリップしていくが、2分30秒を過ぎると3~4秒の注湯の後に3秒ほど空けて3~4秒ほどちょろちょろ注湯するというパターンを繰り返していく。この辺りまでは、ドリッパー内の温度は89~90度くらいをキープしている感じだ。

 3分50秒を過ぎると少なめの注湯が終了し、また5~6秒の注湯の後に7~8秒ほど空けてゆっくりとドリップしていく。89度、88度、87度と徐々に温度を下げながら、約4分40秒後から最後の注湯を始めるころには85.6度まで温度が下がっていた。

 ドリップしているお湯自体の温度を計測できたわけではないが、ドリッパーの中のコーヒー粉の温度はほぼ全般を通じて90度をキープしながら、徐々に温度が下がっていくことは確認できた。

 約5分30秒後にバイパス注湯がスタートし、約6分10秒後にドリップ終了を知らせる音が鳴った。バイパス注湯ですっきりした飲み口にするREGULARと、バイパス注湯をせずにしっかりと豆の味を引き出すSTRONGでの味の違いを比べたが、確かに一口飲んで違いは明らかだった。

REGULARモードで抽出したコーヒー。すっきりした飲み口で個人的にはこちらが好みだった
REGULARモードで抽出したコーヒー。すっきりした飲み口で個人的にはこちらが好みだった
STRONGモードで抽出したコーヒー。写真ではREGULARとの違いはほとんど分からないが、コーヒー豆の中にあるさまざまな味がしっかりと抽出された力強い味だった
STRONGモードで抽出したコーヒー。写真ではREGULARとの違いはほとんど分からないが、コーヒー豆の中にあるさまざまな味がしっかりと抽出された力強い味だった

 しっかりした力強い味わいが好みの人にはSTRONGモードが最適。筆者はREGULARモードのほうが好みで、すっきりとしたクリアな味が飲みやすかった。両者の味の違いがしっかり表れるので、気分に応じて同じ豆でもいれ方を変えて飲むとリラックスタイムの楽しみが増えそうだ。

(写真/安蔵靖志)

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