機械で実現した田口氏のノウハウ

 専門家が監修したツインバード製品では、美容研究家の山本幸恵氏が協力した防水ヘッドケア機「セレブリフト」などもあるが、「担当者が試作品をお持ちしたところ、自分の手に近い動きを再現してくれたことで気持ちが動いたと山本先生が話していました」と金氏は語る。

 それに対し、コーヒーメーカーの再現手法は異なる。田口氏のハンドドリップの動きを再現する……ということではなく、「『結果的に同じ味になるように機械でやる』という調整に苦労しました」と小林氏。

 6カ所の穴から内向きにシャワーのようにお湯が出る仕組みだが、まるで人が手で回し入れるようないれ方にプログラムを調整していった。83℃と90℃というのはおいしいコーヒーをいれる上で田口氏が指定した温度だが、「その温度も上げて、下げて、上げてとか、細かく調節しています」(小林氏)という。

 「ハンドドリップだと、コーヒー豆を挽いた後に平らにならしてから入れるのが基本ですが、機械だとどうしても山のようになってしまいます。それが平らになるようなお湯の出し方など、細かい工夫が詰まっています」(小林氏)

本体上部に配置したミル
本体上部に配置したミル
ミル部は取り外しができるようになっている
ミル部は取り外しができるようになっている

 特許情報を見ると、挽かれたコーヒー粉が抽出具から漏れにくくする仕組み、山状にたまったコーヒー粉をお湯だけでならす仕組み、振動や騒音を抑えるミル装置など、この製品に関連する特許が9件出願されている(現在公開されているのは8件)。「抽出具内のコーヒー粉の偏りを軽減」する技術などはメンテナンス性などの理由からか採用されていないが、「均一に豆を挽いて」「均一にならし」「ハンドドリップのように均一にお湯を注ぐ」ための技術開発には、おいしいコーヒーに対する執念すら感じられる。

 現在、ユーザーからは「マイドリッパーを使いたい」という声があると小林氏は語る。

 「こだわりのあるお客様の要望にお応えしたいのは山々ですが、除電の問題があってなかなか難しい。ドリッパーの溝や形、高さなども田口先生に監修していただいているので、そこを少し変えるだけでも味が変わってしまいます。ハンドドリップできるようにミルだけのモードも付いています」(小林氏)

 ミルは取り外して付属のブラシで洗浄できるようになっている。

 「お手入れ性はお客様にとってもかなり大きなニーズなので、そこは考慮しました。ミルを取り外して掃除できるのはなかなか他社にもない特徴だと思います」(小林氏)

付属のブラシで掃除できるメンテナンス性の高さも魅力だ
付属のブラシで掃除できるメンテナンス性の高さも魅力だ

日本メーカーであることを知らしめたい

 一方で水タンクはコスト面から取り外しができないようになっている。クエン酸洗浄モードは備えているが、少し残念な点ではある。

水タンクは取り外しができない
水タンクは取り外しができない

 また、黒以外の本体カラーに対する要望もあるそうだ。

 「部屋のインテリアを統一されている方も増えてきているので、どの製品も白で統一したいという要望がありますが、コーヒーメーカーなので実現は難しい。しかし当社は新潟の燕三条の企業なので、磨き技術とコラボしたステンレスを採用するといったアイデアは出ています」(小林氏)

 ツインバード工業として、今回のコーヒーメーカーシリーズに懸ける思いは強い。同社は1951年に新潟県三条市に誕生し、21年に創立70周年を迎える老舗メーカーだが、日本のメーカーだと認識している人はそれほど多くないだろう。

 「このコーヒーメーカーのような“ヒーロー商品”を足がかりに、まずツインバードが日本のメーカーだということを皆さんにお伝えするのが1つのミッションです」(金氏)

 職人的なものづくりと社風からか、同社にあまり派手な印象はない。しかし今回のコーヒーメーカーのヒット、そして70周年を迎えるということもあり、ブランドの再構築に向けて本格的に動こうとしている。地方都市の老舗メーカーがどう変革していくのか。コーヒーメーカーの新モデルも含め、今後の展開には期待が持てそうだ。

(写真/安蔵靖志)