今の時代にはまりそうな期待感も

 専用アプリでできるのは、ノイズキャンセリング効果のレベル調整とバッテリー残量の確認程度だ。シンプルだが、集中力を高めるウエアラブル端末としてのコンセプトを徹底的に貫くこだわりに好感が持てる。ただ、現時点の完成度ではまだ粗削りな部分も残っている。

 まず、デザインのインパクトが強すぎること。カフェやシェアオフィスなど公共の場で集中力を高めたいときにこそ使いたいデバイスであるにもかかわらず、装着に毎度かなりの勇気を振り絞った。どうしても周囲から好奇の視線を浴びてしまう。度胸があれば別だが、現状では使える場所は在宅ワーク時か、気心の知れた同僚が一緒に働くオフィスくらいだろう。その姿に周囲が慣れてくれば、本機の開発コンセプトにもある「身に着けているユーザーが集中していることをアピールできるデザイン」の効果が生きるに違いない。

 自宅で使ってみたところ、仕事に集中できるのはありがたいが、周囲の様子がほとんど分からなくなるのには少々戸惑った。家族の声や、玄関チャイムくらいは少し聞こえてほしい。家に一人でいるときに宅配便が届いても分からないだろう。現状の仕様であれば、外音を聞き取るためには本体の電源はオンにせず、「パーティション付き耳栓」として使うほかない。それでは機器の魅力が半減してしまうので、ぜひヘッドホンに「外音取り込み機能」を搭載してもらいたい。

 もう1つの課題は持ち運びにくいことだ。このままのサイズだと仕事用のバッグに入れて持ち歩くのは難しい。本体を折り曲げたり、使うときにパーツを組み立てたりする仕様もあり得るだろう。

 パソコンで動画を見るときなどには、イヤーパッドとパーティションフレームの接続部を前後にスライドさせることで装着時の視界を広げることもできる。

 新型コロナウイルスの感染拡大がやまない中、リモートワーク環境での集中力アップを図りたいビジネスパーソンのことを考えれば、瞬時にパーソナル空間を作り出せるWEAR SPACEは良きサポートツールになる“素質”を備えている。パーティションは横からの飛沫を防ぐなど、ウイルス感染対策に役立つかもしれない。

ジャージー素材のパーティションは着脱ができない。汚れが付着した場合は水に浸した布をよく絞ってから汚れをふき取り、その後から乾いた布でふく方法が推奨されている。外装ケースの変形や塗装の剥離を招く恐れのある、アルコールや台所洗剤などの溶剤または化学雑巾の使用は避けたい
ジャージー素材のパーティションは着脱ができない。汚れが付着した場合は水に浸した布をよく絞ってから汚れをふき取り、その後から乾いた布でふく方法が推奨されている。外装ケースの変形や塗装の剥離を招く恐れのある、アルコールや台所洗剤などの溶剤または化学雑巾の使用は避けたい

 今後はWEAR SPACEと似た製品が他社から出てくる可能性も十分ある。先駆者のシフトールとしてはできるだけ早く商品をブラッシュアップして、より使いやすい“次の一手”を打ちたいところだ。可搬性の向上や、外観を少し穏やかな印象にして、ユーザーが人前でもそれほど抵抗感を持たずに身に着けられるデザインにできれば、新型コロナウイルスとの共存が求められる時代に「パーソナル空間デバイス」というウエアラブルデバイスの新カテゴリーが生まれる道筋も見えてきそうだ。

(写真/山本 敦)