各社の5G対応スマホが出そろい、アップル「iPhone 12」シリーズの登場で普及にはずみがつきそうだ。Android陣営で有力な対抗馬となりそうなのはGoogle(グーグル)の「Pixel 5」だ。超広角カメラや大容量バッテリーなどの特徴を備え、従来モデルから価格を引き下げた実用モデルだ。
片手で使える持ちやすさ
2020年10月15日に発売された「Pixel 5」の直販価格は、SIMフリーモデルで7万4800円(税込み)で5G対応スマホとしては安価だ。Googleが20年8月に発売したミドルレンジモデル「Pixel 4a」は、必要十分な機能をコンパクトなボディーに収め、価格を抑えたことで話題を呼んだ。Pixel 5は同様のアプローチを採った5G対応スマホと言える。価格やサイズからiPhone 12シリーズのコンパクトモデル「iPhone 12 mini」や「iPhone 12」に近い位置付けの製品だ。
画面サイズは6型で、従来モデル「Pixel 4」の5.8型よりやや大きい。厚さ8ミリ、重さ151グラムと6型スマホとしては薄型軽量。手がやや小さい人でも片手でしっかり握れるサイズで、コンパクトなスマホを探している人に好まれそうだ。
余計な装飾を排したミニマルな印象のデザインで、ボディー前面はほぼすべてディスプレーで占められている。フロントカメラはディスプレーに開いた穴の中にあるパンチホール式。背面はアルミニウム素材のサラっとした手触りで指紋汚れが付きにくい。防じん・防水機能はIP68相当で、どちらも現時点で最高レべル。ぬれた手で触ったり、雨にぬれたりしても安心だ。
ディスプレーは有機ELで、解像度は1080×2340ピクセル。明るさや発色は良好だ。一般的なディスプレーよりも駆動周波数を高めた最大90Hz駆動に対応している。周波数の切り替えは自動で、一部対応していないアプリやコンテンツもあるが、表示が縦に長いコンテンツでスクロール時に描画が滑らかに見えるなどの効果がある。
超広角に対応したカメラ機能
背面には超広角と広角の2つのレンズを使ったカメラを搭載している。超広角レンズは1600万画素で視野は107度。これは35ミリ判換算で焦点距離16ミリの超広角に相当する。広角レンズは1220万画素で視野は77度。これは35ミリ判換算で焦点距離27ミリの広角相当だ。Pixel 4は広角レンズと標準レンズの組み合わせだった。
超広角に対応したことでカメラとしてより使いやすくなった。カメラアプリを起動すると、ズーム倍率を0.6~7倍の範囲で設定できる。0.6~1倍が超広角レンズを使った撮影で、広い範囲を一度に写せる。後ろにあまり下がれない状況で大勢を1枚の写真に収めたり、大きな建築物を1画面に収めたりといった撮影ができる。板書のメモなど仕事の記録にも役立つだろう。
以前から搭載されているポートレートモードで背景をぼかした撮影や、夜景撮影モードで手持ちによる暗所撮影ができる。動画撮影では撮影後の処理によって映画の1シーンのようなスロー動画が撮れる「シネマティック撮影」機能が面白い。SNSに投稿する動画を撮影するのに適していそうだ。
生体認証は指紋対応 おサイフケータイも対応
Pixel 4は生体認証機能として顔認証を採用していた。Pixel 5ではこれが省略され、背面の指紋センサーを使った指紋認証を採用している。顔認証のほうが便利にも思えるが、新型コロナウイルス感染症拡大などの影響でマスクをしていると認証されないことが多い。指紋認証ならマスクに関係なく利用でき実用的だ。
Pixel 4はレーダーを搭載し、前面にかざした手の動きで操作する「Motion Sense」機能を搭載していたが、この機能はPixel 5で省略されている。側面を握ることでGoogleアシスタントを起動するなどの操作ができる「Active Edge」機能も省かれた。NFCは引き続き搭載されていて「おサイフケータイ」に対応する。
充電やPCとの接続に使う端子はUSB Type-Cだ。バッテリー容量は4080mAh(ミリアンペアアワー)あり、6型スマホとしては大容量だ。新たに搭載したスーパーバッテリーセーバーモードを使うと、最大48時間利用できる。
Qi(チー)準拠のワイヤレス充電にも対応する。「電池の共有」機能を使うと他のQi準拠デバイスにワイヤレス給電ができる。ワイヤレス充電対応のイヤホンなどを使っていて、外出先でそのバッテリーが切れたときに充電するといった使い方ができる。
処理性能はハイエンド未満、5Gの実力発揮はこれから
プロセッサーにはクアルコムのSnapdragon 765Gを搭載する。これはミドルハイレンジ向けのチップだ。Pixel 4は発売当時のハイエンドチップを搭載していたのでグレードダウンと言える。しかしSNSやメール、Webブラウザーなど一般的なアプリで処理性能の差を感じることはほぼない。ストレージも128GBと十分で、メモリーカードの追加はできないが容量不足で困ることはなさそうだ。
Android OSを開発しているGoogleの純正スマホであるPixelシリーズは、最新機能をいち早く使えるのが魅力だ。OSとセキュリティーは3年間のアップデートが保証されているので、その期間は最新機能を利用できる。アプリ開発などで常に最新のAndroid OSが必要な人に向く。
Pixel 5と同時発売のミドルレンジモデル「Pixel 4a(5G)」はどちらも5G対応だ。5Gには周波数帯によって「Sub-6」(サブシックス)と「ミリ波」があるが、いずれもSub-6のみの対応となっている。
ただ現時点では、5Gの実力を発揮できるケースは限られている。20年春より日本の大手3キャリアが5Gサービスを開始しているが、10月半ばの時点ではまだ5G対応エリアは少ない。数年後には対応エリアはかなり広がると思われるが、現時点では多くの場所でLTE(4G)対応スマホとして動作する。ちなみに無線LANは最新のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応していない。例えばアップルのiPhone 12シリーズなどWi-Fi 6対応スマホが増えており、ここは残念なところだ。
実用的なスペックで価格を抑えた5Gスマホ
Pixel 5は5G対応だけでなく、超広角カメラと広角カメラを組み合わせ、夜景撮影に強く、ユニークな動画撮影もできるカメラ機能、IP68相当の強力な防じん・防水性能、容量の大きいバッテリーなどが特徴だ。Pixel 4にあった先進的だが実用性の低い機能を省き、価格を抑えた。
Android搭載の5G対応スマホは各社から発売されているが、9万円を越える大型高級モデルが中心だ。Pixel 5は薄型軽量で持ちやすく、5Gスマホとしては安価なのが強みとなる。コンパクトな5Gスマホが必要な人や、仕事関係などで5Gスマホが必要な人には魅力ある選択肢だ。同時発売でさらに安いPixel 4a(5G)と併せて、実用的な5G対応スマホとして人気を呼びそうだ。
(写真/スタジオキャスパー)