ユーザーの耳に最適化したプロファイルが作れる

 エンボディ社が開発したImmerseの特徴は、機械学習アルゴリズムにより作られたデータベースと照合して、ユーザーが立体サウンドを最も心地よく楽しめるよう最適化されたオーディオプロファイル(設定値)を瞬時に作成する点にある。

 実際に試してみた。スマホなどで右耳の写真を撮影して、PCアプリケーションからサーバーに画像を送ると、1~2分もたたないうちに自分の耳に合わせたプロファイルが送られてきた。これをアプリケーションソフトに読み込んで、5.1ch音声のゲームを再生してみると、音の定位が立体的になり、奥行き方向の見晴らしがクリアになった。ソフトのコントロールパネルから機能のオン・オフを切り替えると、ステレオ再生時には“ひとかたまり”に聞こえていた音がきれいに分かれて、余韻のきめ細かさが際立ってくる。

スマホのカメラで右耳の写真を撮影して送るとユーザー専用のパーソナルプロファイルが作成される
スマホのカメラで右耳の写真を撮影して送るとユーザー専用のパーソナルプロファイルが作成される

 ATH-G1のヘッドホンとしての地力は、とても解像度が高い。低域のインパクトが少し強調されているものの、全体にフラットバランスで、長時間のリスニングでも疲れにくいのが長所だ。優しく包まれるような装着感も心地いい。

 Immerseの技術はATH-G1をはじめとするオーディオテクニカのゲーミングヘッドホン6機種に最適化されている。他社のヘッドホンにない立体サウンドのインパクトが強く打ち出せるはずだ。

頭部を優しく包み込むような装着感を実現。本体左側には取り外し可能な高音質マイクを搭載
頭部を優しく包み込むような装着感を実現。本体左側には取り外し可能な高音質マイクを搭載

ヘッドホン向けのサブスクに可能性あり

 オーディオテクニカの平山氏は、「従来ヘッドホンのビジネスは、顧客にハードウエアを買ってもらうことをある種のゴールとしてきた。しかし今後は顧客との中長期的な関係構築を見据え、サブスクサービスも有効活用しながら顧客により魅力的なサービスを提案できるのではないか」と可能性を語る。

 20年はコロナ禍の影響が国内にも広がったことで、ヘッドホンにもビジネスパーソンによるテレワーク需要が押し寄せた。また多くの人々が家で過ごす時間が長くなったことで、巣ごもり需要も顕在化している。オーディオテクニカが扱うヘッドセットやマイクロホンなど、コミュニケーション用途の製品もこの期間に需要が大きく伸びたという。平山氏は「特に有線+マイク付きのヘッドホンの需要が高まり、近年ではまれと言えるほどの売り上げ増を記録した。ATH-G1をはじめとするゲーミングヘッドホンは、海外でも長らく欠品が続いている」と話す。

 秋にはオーディオテクニカのライバルであるアップルも、ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」を独自の立体音響技術に対応させる無料のソフトウエアアップデートを実施する予定だ。市場で人気の高いアップルのイヤホンまでもがスポットを当ててきたことから、今後、立体音響の技術には間違いなく注目が集まるだろう。オーディオテクニカのゲーミングヘッドホンにも追い風となるかもしれない。

(写真/山本 敦)