苦労して実現したトランスフォームギミック

 筆者がこの商品を初めて目にしたのは、18年秋のことだ。翌19年度に発売されるスノーピークの新製品が一堂に会する展示会で、「HOME&CAMPバーナー」は異彩を放っていた。というのも、それまでのスノーピークはアウトドアでの使用を想定したギアが中心。そこに家庭の定番アイテムともいえる卓上コンロ、しかも子供の頃に遊んだ超合金のロボットのように変形するギミックを備えているのだから、注目を浴びないわけがない。会場に居合わせた記者やアウトドア業界関係者たちが、興味津々に開発担当者と話していた光景が、今でも印象に残っている。

 しかし、その後の製品化までの道のりは長く険しかった。実際、発売時期はなかなか定まらず、何度も協議と改良、検証を続ける日々が続いたという。

五徳の展開は3ステップでとても簡単。安全規格をクリアするため、何度も仕様変更を余儀なくされた
五徳の展開は3ステップでとても簡単。安全規格をクリアするため、何度も仕様変更を余儀なくされた

 「日本でLPガスを燃料に使った装置を販売するには、厳しい安全規格が存在する。法律を守りながら、安全でかつ革新性のある商品を生み出さなければならない点に苦労した。開発初期の設計構想では、現行法で構造分類が困難な部分が見つかり、これを一つずつクリアしながら開発しなければならず、量産する間際まで改良が続いた」(林氏)

家でも使えるキャンプギア、という新ジャンル

 最近でこそインドアでもアウトドアでも、両方で使えるギア提案というのが多くのアウトドアブランドで見受けられる。しかし18年当時はまだ少数で、国内アウトドアメーカーの雄、スノーピークが“HOME”というキーワードを商品名に打ち出した際は、新たな時代の幕開けを感じさせた。

 「製品名には、家庭の中で慣れ親しんでいる道具を、気軽に屋外に持ち出して楽しんでほしいという願いを込めている。“HOME”を商品名に取り入れた製品はこれが初めてだが、今後は“HOME&CAMP”の名を付けた製品が増えると思う」(林氏)

卓上コンロはテーブルの上で調理ができるので、キャンプのときも家でのような団らんの時間を提供してくれる
卓上コンロはテーブルの上で調理ができるので、キャンプのときも家でのような団らんの時間を提供してくれる

 アウトドアでしか使えないギアであれば、おのずとユーザーの分母は限られる。家で使うものを外でも使いやすくというコンセプトにしたことで、より多くのユーザーがスノーピーク製品と触れ合うきっかけをつくった。これもヒットの一因だろう。

 「カセットコンロは室内でも使用できる数少ないガス機器。『HOME&CAMPバーナー』はアウトドアデビューのきっかけづくりにもなっていると思う」(林氏)