バンダイ子会社のシー・シー・ピー(CCP、東京・台東)が2018年2月に発売した「コードレス回転モップクリーナー Neo」が好調だ。20年1月にシリーズ累計販売数50万台、6月には60万台を突破した。18年8月発売の「電気ちりとり」も好評。アナログな製品の電動化にヒットの芽あり。

シー・シー・ピーの「コードレス回転モップクリーナー Neo」は水でぬらした2つのモップパッドが毎分約130回転することで、床などを水拭き掃除できる。直販サイト価格はパッドを増量した「コードレス回転モップクリーナーNeo おうち時間セット」が1万6500円(税込み)
シー・シー・ピーの「コードレス回転モップクリーナー Neo」は水でぬらした2つのモップパッドが毎分約130回転することで、床などを水拭き掃除できる。直販サイト価格はパッドを増量した「コードレス回転モップクリーナーNeo おうち時間セット」が1万6500円(税込み)

ヒットへ続く流れを変えた「実演販売」

 水にぬらした2つのモップ(パッド)が回転し、床を水拭きする「回転モップクリーナー」。発想自体はシンプルだが、そもそもモップを電動化しようと思った理由は何だったのか。シー・シー・ピー 営業企画部の塩谷草子氏は「インターネットで調査したところ、日本人には水拭き掃除をする習慣が根強いことが分かった。特に60代以上の女性の場合、ぞうきんがけの習慣があるものの体に負担がかかる。回転モップクリーナーはそのつらさを解決できる商品だった」と話す。

水でぬらして絞ったモップパッドを、取り付け目安線に合わせて張り付けてから使用する
水でぬらして絞ったモップパッドを、取り付け目安線に合わせて張り付けてから使用する
市販のフロアワイパーなどと同様に、持ち手とパイプが取り外せるようになっており、窓拭き用のハンディーワイパーにもなる
市販のフロアワイパーなどと同様に、持ち手とパイプが取り外せるようになっており、窓拭き用のハンディーワイパーにもなる

 同社のものづくりは一から自社で企画・デザインするものと、他国で販売されている製品を日本市場向けにアレンジするものとあり、回転モップクリーナーは後者だった。15年7月発売の初代モデルは「中国系商社から提案された回転モップクリーナーをベースに本体色を変えたり、清掃能力の高い韓国メーカーの『キャッチモップ』を採用したりするなどのアレンジを加え販売した」と塩谷氏。

シー・シー・ピー 営業企画部の塩谷草子氏
シー・シー・ピー 営業企画部の塩谷草子氏

 19年には類似品が出回るほどの人気で、同年12月には同社が注意喚起のお知らせを行ったほど。逆にそのおかげで幅広く存在が知られるようになった回転モップクリーナーだが、最初からヒットしたわけではない。当初は1店舗で月に1~2台売れればいいほうで、発売から約1年は販売態勢やコミュニケーション戦略が整っていなかったため苦戦したという。

 試行錯誤の中、専門の販売士による店頭での実演販売を試したところ、2日間で30台以上が売れた。「これが流れが大きく変わったきっかけだった」と塩谷氏は振り返る。

 「お客様に触ってもらい、しっかり知ってもらえれば、共感が得られることがよく分かった。そこで実演販売士や社員による家電量販店、ホームセンター、東急ハンズなどでの店頭実演イベントを増やした」(塩谷氏)

 店頭実演で分かったのは、掃除機売り場を訪れるお客でも、床に見えない汚れがあるという事実を知らないことだった。掃除機はほこりなどの見えるごみを掃除するが、雑菌や皮脂などの見えにくい汚れが蓄積され、ざらつきやべたつきの原因になる。それを説明すると、納得した反応を示すお客が非常に多かった。おそらく普段から実感していたのだろう。

 その後、店頭用の映像を流すといった施策も行ったが、実演する店舗以外ではなかなか販売が伸びなかった。そこで次のステージとしてテレビ通販に的を絞った。問屋主催の展示会に出展したところ、関西ローカルでのテレビ通販デビューとなり、狙い通りヒット。それからは関東キー局のテレビ通販やジャパネットたかたなどでも採用された。

コロナ禍による在宅時間の増加も販売を後押し

 2代目となる「コードレス回転モップクリーナー Neo」は、カスタマーセンターに寄せられた初代モデルユーザーの声や店頭でのコミュニケーション、インターネットでの意見などを反映し、改良したものだ。具体的には「モップの回転数を毎分80回から130回にアップし、本体からパッドがはみ出すようなデザインにしたことで、部屋の隅まで掃除がしやすいように工夫した」(塩谷氏)。

本体からモップパッドを少しはみ出させることで、部屋の隅まで掃除しやすくした
本体からモップパッドを少しはみ出させることで、部屋の隅まで掃除しやすくした
ACアダプターを使った充電式。バッテリーの充電時間は約3.5時間で、連続運転時間は約1時間(モップ乾燥時)。交換用バッテリーは直販サイト価格2750円(税込み)
ACアダプターを使った充電式。バッテリーの充電時間は約3.5時間で、連続運転時間は約1時間(モップ乾燥時)。交換用バッテリーは直販サイト価格2750円(税込み)

 実際に使ってみたところ、まずコンパクトで収納しやすい点に魅力を感じた。パッドをぬらして装着し、掃除が終了したら洗って乾かすだけなので、メンテナンスも楽だ。調理時の煙から出た油汚れや、足の裏の皮脂汚れなど、目には見えにくいがべたつく汚れをしっかり取り除けるので、手軽ながら満足度はかなり高い。

から拭き不要の洗剤などを使えば、10分程度で部屋中をきれいに水拭き掃除できるので、かなり手軽に感じた
から拭き不要の洗剤などを使えば、10分程度で部屋中をきれいに水拭き掃除できるので、かなり手軽に感じた

 回転モップクリーナーは5月から8月にかけてが販売のピークシーズンになる。気温や湿度の上昇で汗をかきやすくなり、はだしで家を歩き回ると皮脂汚れから雑菌が繁殖し、ベタベタした汚れになるためだ。新型コロナウイルス感染拡大による“おうち時間”の増加や、緊急事態宣言の発出も販売を後押しした。

 「新型コロナ禍で清掃意識が高まり、ステイホーム期間が長くなると自宅をきれいにしたい気持ちが高まってくるので、4月、5月の売れ行きはとてもよかった」(塩谷氏)

 最近はフロア専用のスチームモップなども数多く登場している。スチームは高熱で除菌可能な点が強みだ。

 「スチームモップは除菌できるのが強みだが、高熱でフローリングを傷めることを気にする人もいる。回転モップクリーナーは水タンクがなくて、重さ1キログラムと軽いことや、コードレスで掃除しやすい点が強み。汚れをためることなく気軽に掃除できるので、高熱で掃除する必要もなくなるのではないかと思う」と塩谷氏。フロアワイパーのウエットシートで掃除する人もターゲットだ。ウエットシートでは途中で乾いてしまってシートの交換が必要になる。そうした難点を解決したい人に回転モップクリーナーは向いていると同氏は見ている。

フロアワイパーをより快適に使える「電気ちりとり」

 回転モップクリーナーは既存製品のアレンジから生まれた製品だが、同じく“アナログ”な家事用品ながら新たな発想で独自開発したのが、18年8月発売の「電気ちりとり」だ。こちらもシー・シー・ピーの存在感を世に知らしめた製品といえる。

ちりとりを電動化するという意外性が面白い「電気ちりとり」。直販サイト価格は6578円(税込み)
ちりとりを電動化するという意外性が面白い「電気ちりとり」。直販サイト価格は6578円(税込み)

 「多くの家にあるフロアワイパーは気軽に使えて便利だが、シートの面では汚れを取れるものの、粒ゴミやまとまったゴミは取り切れない。シートをくるんで捨てる手間や、後からスティッククリーナーなどで掃除する手間があるという不満の声を聞き、そこから企画がスタートした」(塩谷氏)

 電気ちりとりは、フロアワイパーを前面スイッチに押し当てると吸引を開始し、ゴミを内部の紙パックに収集する仕組みだ。ただ、一見するとティッシュボックスのような形のため、「店頭に置いておくだけでは売れない商品だった」と塩谷氏は話す。

フロアワイパーを前面に押し当てることでゴミを吸引する仕組みになっている
フロアワイパーを前面に押し当てることでゴミを吸引する仕組みになっている
吸引したゴミは紙パックに収納される仕組みだ
吸引したゴミは紙パックに収納される仕組みだ

 また回転モップクリーナーでは当たったテレビ通販も、視聴者は60歳代以上が中心で、電気ちりとりのターゲット層とは異なっていた。そのため2社で販売できたが、思っていたほど売れなかったという。そこで「想定はしていたが、犬猫と一緒に暮らす人たちに共感してもらえていることが分かったので、ネット広告で認知を高めていった」(塩谷氏)。

 ペットの毛をさっと掃除するのにフロアワイパーは便利だが、猫砂など大きめのゴミを取るためには掃除機などを使わなければならない。しかし電気ちりとりを使えば、フロアワイパーで寄せて吸い取らせるだけで、ホコリや毛などと一緒に掃除できる。

 テレビの情報番組などで取り上げられるようになって認知が高まり、最近ではホームセンターのペット用品コーナーなどでも販売されるようになった。さらに別売でほうきが触れると吸引を開始する「アタッチメント」も用意し、シニア層も狙う。

別売のアタッチメントを取り付けたところ。直販サイト価格は1017円(税込み)
別売のアタッチメントを取り付けたところ。直販サイト価格は1017円(税込み)
アタッチメントにほうきが接触すると、てこの原理で下部のスイッチがオンになる
アタッチメントにほうきが接触すると、てこの原理で下部のスイッチがオンになる

 「掃除機と違って排気がほとんどなく、吸引音が出るのは一瞬なので、比較的自然志向の方や年配の方は、ほうき掃除という清掃方法を選ばれる方も多い。ホームセンターの売り場でもほうきコーナーは意外と充実しており、そちらで販売されている場合もある」(塩谷氏)

 実際に使ってみると、確かにフロアワイパーでは取り切れない大きさのゴミを寄せていって吸引させるのは合理的だ。ゴミを1カ所に寄せて一気に取り込むという意味では、形はまるで違うものの、まさに「電気ちりとり」という名にふさわしい。吸引時には大きな音がする(運転音は約80デシベル)ものの、ゴミやホコリをフロアワイパーで集めている時間はほぼ無音なので、テレビの音や音楽などを聞きながらでも気にすることなく掃除できる。

 電気ちりとりの売れ行きはコードレス回転モップクリーナー Neoとともに好調で、20年5月末時点で約5万7000台を販売したという。「4月以降、急速に売れ行きが加速しており、販売台数は想定の2倍以上となっった。現在はオンラインでの販売が中心だが、これから店舗での販売も増やしていこうと考えている」と塩谷氏は語る。

(写真/安蔵 靖志)