米アマゾン・ドット・コムは新しい8インチタブレット「Fire HD 8」を2020年6月に発売した。スタンダードモデルの32GB製品は9980円(税込み)という手ごろな価格で買えることもあり、発売以来Amazon.co.jpの家電・カメラ部門の売れ筋ランキング上位を陣取っている。

米アマゾン・ドット・コムが発売したお手ごろ価格のタブレット「Fire HD 8」シリーズ。左側スタンダードモデルのFire HD 8にはブラック、ホワイト、ブルーの3色を用意。右側がFire HD 8 Plus
米アマゾン・ドット・コムが発売したお手ごろ価格のタブレット「Fire HD 8」シリーズ。左側スタンダードモデルのFire HD 8にはブラック、ホワイト、ブルーの3色を用意。右側がFire HD 8 Plus

Fire HD 8は9980円から。上位モデルの“Plus”は何が違うのか

 新型コロナウイルス感染症の影響により、自宅などオフィス外でワークスペースを見つけて仕事に打ち込むビジネスパーソンにとって、アマゾンの“1万円から買えるタブレット”はテレワークの強い味方になるのだろうか。そこで今回は新しいFire HD 8シリーズの中からスタンダードモデルの「Fire HD 8」と、ワイヤレス充電にも対応する強化版の「Fire HD 8 Plus」をチェックする。

ディスプレーはコンテンツの視認性が高い8インチ。フロントカメラは本体を横に構えてビデオ通話がしやすいように長辺側のフレームに搭載した
ディスプレーはコンテンツの視認性が高い8インチ。フロントカメラは本体を横に構えてビデオ通話がしやすいように長辺側のフレームに搭載した

 Fire HD 8は8インチのHDディスプレーを搭載するタブレットで、20年発売なので第10世代に当たる。プロセッサーを強化したことで、従来モデルから処理速度がおよそ30%向上した。これにより動画視聴やゲーム、Web閲覧などのマルチタスク処理がスムーズにできるようになった。ストレージ容量は32GBと64GBから選べ、microSDカードを足すことにより拡張可能だ。注目は32GBモデルで、9980円(税込み)というインパクトのある価格に設定している。

 Fire HD 8 Plusの基本仕様はスタンダードモデルとほぼ同じだが、メインメモリーのRAMを2GBから3GBに強化している。Qi規格に対応したワイヤレス充電機能を備え、オプションでタブレット本体を立て掛けられるワイヤレス充電スタンドを用意する。パッケージに同こんするアダプターを使えば、本体バッテリーの高速充電も可能だ。内蔵ストレージ32GBモデルの本体価格は1万1980円(税込み)。Fire HD 8タブレットを少しでも快適に使いたいなら、2000円足せばPlusが買えることを念頭に置いておこう。

Fire HD 8 Plusにサイズを最適化したオプションのワイヤレス充電スタンド
Fire HD 8 Plusにサイズを最適化したオプションのワイヤレス充電スタンド

 8インチのサイズ感は片手で持ちやすく、コンテンツの視認性も高い。アマゾンのタブレットらしく、AI(人工知能)アシスタントのAlexaを内蔵する。音声コマンドへの反応に優れたマイクシステムを常時待機状態にしながら、最長約12時間の連続コンテンツ視聴が楽しめるスタミナを実現した点は見事だ。

 タブレットの「Showモード」をオンにして、Alexaを起動させるウェイクワードを話しかけると、今日の天気や最新ニュースを画面に表示しながら音声で返答してくれる。アマゾンのディスプレー付きスマートスピーカー「Echo Showシリーズ」は電源ケーブルによる給電が必要な据え置きタイプだが、Fire HD 8タブレットはまるでバッテリーを内蔵した「持ち運べるAlexa搭載スマートディスプレー」のような使い方もできるのが面白い。

Fire HD 8シリーズのShowモードをオンにするとAlexa搭載スマートディスプレーのように使える
Fire HD 8シリーズのShowモードをオンにするとAlexa搭載スマートディスプレーのように使える
バッテリー内蔵なので、室内を持ち運びながらAlexaによる音声コントロールでスマート家電の操作などが行える
バッテリー内蔵なので、室内を持ち運びながらAlexaによる音声コントロールでスマート家電の操作などが行える

ビジネス向けアプリはどこまでそろう?

 Fire HDタブレットはアマゾンがカスタマイズしたFire OSを搭載しているため、iPadやAndroidタブレットに比べると使えるアプリの幅が若干狭い。Google Playもサポートしておらず、基本的には独自のAmazonアプリストアに公開されているアプリしか使えないのだ。

Amazonアプリストアに公開されているアプリはGoogle PlayストアやアップルのApp Storeに比べると少なめ。オフィスワーク用のアプリを充実してもらいたい
Amazonアプリストアに公開されているアプリはGoogle PlayストアやアップルのApp Storeに比べると少なめ。オフィスワーク用のアプリを充実してもらいたい

 テレワーク活用に欠かせないビデオ会議アプリは、「Zoom」「Skype」「Webex」をAmazonアプリストアでダウンロードできた。端末にはフロントカメラもあるので、Skypeでビデオ通話を試したところ、動作は快適だった。オフィスワークの定番アプリにはDropboxやOneDrive、Evernoteもあったが、Microsoft OfficeシリーズはメールアプリのOutlook以外ヒットしない。AdobeのPDFリーダーも、サードパーティー製のアプリを使う必要がある。

 一方、エンターテインメント系コンテンツ向けのアプリは想像以上に充実している。特に動画・音楽・電子書籍についてはAmazonプライムのプラットフォームと強力に連携しているので、Amazonプライム会員のユーザーはコンテンツビュワーとしてタブレットが有効に使える。

Amazonプライム・ビデオの視聴は音声によるコンテンツ検索も含めて快適に使える
Amazonプライム・ビデオの視聴は音声によるコンテンツ検索も含めて快適に使える
側面にステレオスピーカーを内蔵
側面にステレオスピーカーを内蔵
電子書籍も心地よく読めるサイズ感
電子書籍も心地よく読めるサイズ感

 Fire HD 8シリーズはゲームプレー時に端末のパフォーマンスを最適化する「ゲームモード」を新たに搭載した。レーシングゲームやシューティングゲームの動作も非常に快適だ。Fire HD 8を使い込むうちに、アマゾンには1万円台のタブレットを「ポータブルゲーム機」として普及させる狙いもあるように思えてきた。タブレットの性能は十分なので、あとはアプリストアに魅力的なゲームタイトルを次々呼び込めるかどうかが、ライバルとの勝負の分かれ目になる。常時ネット接続が必要なゲームアプリを屋外で快適に遊べるように、4G LTE以上のセルラー通信対応モデルも欲しい。

iPad追撃の鍵は周辺機器の充実

 Echo Showシリーズには、Amazonアカウントを登録した端末にAmazon Alexaアプリを使ってビデオ通話ができる「呼びかけ」機能がある。Fire HD 8シリーズもAmazon Alexaアプリを立ち上げて、Echo ShowやAmazon Alexaアプリをインストールしたスマホやタブレットのユーザーとビデオ通話が可能だ。

 呼びかけ機能は、もともと宅内で別の部屋にいる家族と通話したり、外出先から自宅の様子を見守る機能を想定しているため、1対多の通話や背景画像の差し替えなど、ビジネスシーンを想定した作り込みができていない。しかし会社の同僚や頻繁に連絡を取るビジネスパートナーとのカジュアルなビデオ通話用としては、今のままでも十分に使えるだろう。テレワークを想定しているなら、Zoomなどの高度なコミュニケーションアプリとうまく使い分ける必要がある。

シンプルにビデオ通話が楽しめる「呼びかけ」機能。離れて暮らす親とのコミュニケーションなど、リモート帰省用のツールとしても活用しやすい
シンプルにビデオ通話が楽しめる「呼びかけ」機能。離れて暮らす親とのコミュニケーションなど、リモート帰省用のツールとしても活用しやすい

 アマゾンは上位モデルのFire HD 8 Plusの反響を見ながら、今後ビジネスツール用タブレットに進出する機会を探っている可能性もある。それなら専用のワイヤレスキーボードやスタイラスペンをオプションとしてそろえてもらいたい。ちなみに筆者が所有するBluetooth対応のマウスやキーボードは、Fire HD 8 Plusにペアリングして使うことができた。アマゾンも価格を抑えた周辺機器を上手に展開できれば、拡大するテレワーク需要にも必ず応えられるだろう。そうなればアップルの「iPad」を追撃する良きライバルとして、面白い存在になるに違いない。

Fire HD 8 PlusにBluetoothキーボードとマウスを接続。周辺機器とアプリが充実してくれば、ビジネスツールとしてもAmazonのタブレットが有力な選択肢に挙がってくるだろう
Fire HD 8 PlusにBluetoothキーボードとマウスを接続。周辺機器とアプリが充実してくれば、ビジネスツールとしてもAmazonのタブレットが有力な選択肢に挙がってくるだろう

(写真/山本 敦)