日本マイクロソフトは2020年5月12日、Windowsタブレット「Surface Go 2」を発売した。従来モデルと同じ大きさで、ディスプレーサイズやマイク性能、処理性能を強化し、価格も手ごろ。テレワークやオンライン授業など、withコロナ時代を意識したモデルに仕上がっている。
携帯性抜群 サイズはそのままでディスプレーを大型化
「Surface Go 2」の大きな特徴は小型軽量で携帯しやすいこと。従来モデルの「Surface Go」は、コンパクトなモバイルPCとして人気を集めた。Surface Go 2も最軽量モデルで544グラムと、従来モデル(最軽量で522グラム)とほぼ同じ重さとサイズだ。手に持ってみると、薄い板状のデザインなので片手で楽に抱えられるし、引っかかる突起部分がないため薄いビジネスバッグでも楽に出し入れできる。
従来モデルはその小型軽量が法人向け市場で評価され、想定以上の売れ行きを示したそうだ。日本マイクロソフトSurfaceビジネス本部の小黒信介本部長は「Surface Goはオフィスや工場向けの需要も大きかったが、法人向け市場で出荷台数が最も多かったのは、小型で持ち運びやすさを高く評価した教育市場だった」と語る。コンシューマー市場でも一般的なモバイルPCとしての需要だけでなく、子供や女性が使うPCとしての人気が高かったという。やはり小型軽量がこのモデル最大のセールスポイントなのは間違いなさそうだ。
Surface Go 2は従来モデルとほぼ同じデザインで、ディスプレーが10型から10.5型に拡大された。わずか0.5インチの差だが、従来モデルと並べると、かなり見やすく感じられる。ディスプレー周囲の額縁部分が狭くなったので、画面に集中しやすくなった。解像度は従来モデル(1800×1200ドット)より高い1920×1280ドットになり、精細感が増している。明るさや発色にあまり差は感じられないが、従来モデルでも十分な画質だったので問題はないだろう。
マイクを強化 ビデオ通話に強くなった
ディスプレー上部にはカメラとマイクを搭載し、ビデオ会議などに活用できる。新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークが定着しつつある現在、ビデオ会議で自分の音声が明瞭に伝わらず、もどかしい思いをした経験のある人は多いだろう。Surface Go 2ではそうしたトラブルを減らせるように、Surface Pro 7などの上位シリーズと同じマイクを新たに搭載した。これによって従来モデルよりも音声が明瞭になり、周辺の雑音も抑えられるようになった。
実際に従来モデルとSurface Go 2に向かってそれぞれしゃべりかけて録音した音声を比較してみた。マイクの近くで話したときはあまり違いを感じられないが、マイクから50~60センチほど離れた位置から話すと、Surface Go 2のほうが明瞭であることが実感できた。周囲の雑音もSurface Go 2のほうが気にならない。ビデオ会議やオンライン授業で大きな恩恵を受けるだろう。
フロント側のカメラは従来モデルと同様にWindows 10の生体認証機能「Windows Hello」に対応し、顔認証でサインインが可能だ。パスワードを入力する手間や入力時に盗み見られる心配がなく、自分の顔を映すだけで素早くサインインできる。
テレワーク需要でLTEモデルが人気
従来モデルのCPUはPentium Goldのみだったが、Surface Go 2はPentium Gold搭載モデルと、より処理性能の高いCore m搭載モデルが用意された。ただしSurface Proシリーズが搭載するCore iシリーズに比べると処理性能は低く、3Dグラフィックスや動画編集、CADなど高い処理性能が必要な用途には向いていない。マイクロソフトオフィスを使う、Webブラウザーでインターネットを利用するといった用途が中心だろう。
メインメモリーはモデルによって4GBまたは8GBとなっている。Windows 10をスムーズに動作させるために4GBでは心もとないので、できれば8GBモデルを選択したい。ストレージは64GBのeMMCまたは128GBのSSDで、法人向けに256GBのSSDを搭載したモデルを用意する。「テレワーク需要により、自宅で使うメインマシンとして多くのデータを保存できるようにした」と小黒本部長は説明する。
通信機能では無線LANの最新規格であるWi-Fi 6に対応しているほか、SIMカードを取り付けたりeSIMを利用すると携帯電話回線を使ってインターネットに接続できるLTE対応モデルを従来モデルに引き続き用意する。SurfaceシリーズのLTE対応モデルは、外出先でインターネットを利用したい人を中心に一定の人気があった。新型コロナウイルス感染拡大の影響によるテレワーク需要の増加で、自宅にインターネット接続環境がない人や、接続環境はあるが回線速度が遅い人などにも人気が広まっているという。
「テレワーク需要によりSurfaceシリーズ全体が人気だが、その中でも特にLTE対応モデルの需要が高まっている。LTEを活用してストレスなくネットワークに接続でき、モバイルPCとして外出先で利用したい人だけでなく、テレワークで自宅にインターネット接続環境が必要になった人もターゲットになる。企業ユーザーにとって、在宅勤務の社員に適切なネットワーク環境を与えられるデバイスだ」(小黒本部長)
操作性、拡張性は変化なし
PCとして使うために必須のキーボード兼カバーは別売だ。従来モデル用の製品と互換性がある。本体にマグネットで取り付けるタイプで、根元を折り畳んでキー入力しやすいように角度を付けられる。やや固めのキータッチでキーピッチは狭いが、それほど窮屈さは感じられない。慣れてくるとタッチタイピングも十分可能だ。自宅やオフィスで利用する際は、外付けキーボードを使ってもいいだろう。ディスプレーはタッチ操作対応で、オプションのペンを使った入力も可能だ。
拡張端子はUSB Type-Cが1つあるほか、付属のACアダプターを取り付ける独自の接続ポート、ヘッドホンジャック(音声入出力端子)、micro SDXCカード対応のメモリーカードスロットとなっている。本体の拡張性は低いので、例えば有線LANを使いたい、USB Type-Aを使いたいといった場合は外付けアダプター類が必要だ。オプションで複数の拡張端子を備えた拡張ドック「Surface Dock 2」も用意する。
コンシューマー向けモデルはOSにWindows 10 Home(Sモード)を搭載し、Excel、Word、PowerPointなどを含むマイクロソフトオフィス Home & Business 2019が付属する。直販価格はPentium Gold、4GBメモリー、64GBストレージ搭載モデルで5万9800円(税別)からだが、マイクロソフトオフィスの価格が含まれていることを考えると、コストパフォーマンスは高いと言えるだろう。
教育市場を狙うデバイス
日本マイクロソフトはSurface Go 2の携帯性の高さと価格の安さを強みに、教育市場を狙っている。重視しているのは、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」だ。全国の学校で生徒に1人1台の端末を持たせ、高速大容量の通信ネットワークを整備する構想で、小中学生の端末購入に1台につき最大4万5000円の補助が出る。Surface Go 2の教育機関向けモデルで4万7800円からと価格が抑えられていて導入しやすくなっている。
教育市場向けとしては、NECやDynabookなどが小型で安価なタッチ対応PCを発売している。Surface Go 2は、それらと比べて薄く軽くコンパクトな点が大きな強みとなっている。
「薄く軽いSurface Go 2は、小学生がランドセルに入れて持ち運ぶのに適している。教育市場に向けて、子供に最適化した長さ11センチのペンも用意した。キーボードを使って日本語入力を学べ、小学生が利用するのに最適なデバイス」(小黒本部長)
Surface Go 2はマイク性能を強化したことで、ビデオ会議やオンライン授業で利用しやすくなった。さらにLTEモデルなら自宅に無線LAN環境がなくても仕事や勉強に利用できるなど、モバイルPCとしての機能を法人市場や教育市場に向けてうまく当てはめている。これで小型軽量かつ価格も手ごろとなれば、withコロナ時代の端末として有力な選択肢に挙げられても不思議ではない。従来モデル以上に幅広いユーザーに使用される製品になりそうだ。
(写真/スタジオキャスパー)