インスタに投稿した画像で一気に火が付く

 それまでのアウトドアテーブルと言えば、四角いデザインがスタンダード。「たき火を囲むテーブルは当時もあったんですが、四角しかなくて。大人だと4人座るのが限界ですし、四隅がデッドスペースになってしまう。もっと心地よく、多くの人がたき火を囲める形状はないかと試行錯誤してたどり着いたのが六角形でした」と大熊氏は振り返る。

 実は大熊氏の本業は、店舗什器(じゅうき)などを手掛ける木工加工会社ビックベアー(埼玉県川口市)の経営だ。仕事の合間に試作品を作り、それをキャンプ仲間たちに配っていた。しかし木工加工のプロである大熊氏が作ったヘキサテーブルは高級家具のようなクオリティーで、多くの仲間たちが絶賛。ついにはインスタグラムで注目されることになる。

 「インスタグラムで『#キャンプ』のハッシュタグを付けて投稿したんです。そうしたらものすごい量の問い合わせが来まして……。当時は暇な時間にこつこつと作っていただけなので量産態勢はありませんし、在庫もゼロ。うれしかった半面、困りましたね」(大熊氏)

 じわじわ火が付いたのではなく、スタートダッシュで売れ始めたヘキサテーブル。それだけこのテーブルが革命的で、多くのキャンパーたちが待ち望んでいた商品だったという証しだろう。

ヘキサテーブルの製作に欠かせない5軸加工機。誤差の少ない正確なカットが行える
ヘキサテーブルの製作に欠かせない5軸加工機。誤差の少ない正確なカットが行える

手に入りづらいと、さらに所有欲をかき立てられる

 筆者がヘキサテーブルを初めて目にしたのもインスタグラムだった。独特な六角形状と天板にプリントされた柄の格好良さに、びびっときたのを覚えている。ところがいくら調べても値段やサイズ、問い合わせ先が見つからない。ホームページはなく、ネット通販サイトでもヒットしない。手に入れたくても、どうしていいのか分からない。まさに“謎の存在”であった。

 「1年前にTheArthの店舗をオープンしてからは、ヘキサテーブルの情報がいろいろと公になりましたが、以前はあえてベールに包んでいました。正式な商品名も、全部で何種類あるかも分からない。どこで買えるかも、誰が作っているかも分からないという、普通に考えたらひどい状態です。ちゃんと売って利益を出すという考えもあるのでしょうが、あくまでも趣味の延長でやっていることだったので、自分が楽しめる範囲でやりたいというのが本音でしたね」(大熊氏)

5軸加工機カットされた木材は、1つひとつを手作業でフィニッシュ。この後、塗装の工程を経て完成となる
5軸加工機カットされた木材は、1つひとつを手作業でフィニッシュ。この後、塗装の工程を経て完成となる

 店舗を構えた現在でも、ヘキサテーブルの受注や問い合わせのやり取りは、すべてメールに集約している。メールが届いたらカタログデータを送り返し、それを見たユーザーが、再度メールで発注する流れだ。プロモーションと呼べるものは、大熊氏のインスタグラムの個人アカウント(@rinomaco)のみだが、フォロワーが1万7000人もいるのだから影響力は強い。発売から5年がたった今でも、新規の問い合わせが1日に40件以上は届くという。

 「最近は製品開発のストーリーズが中心ですが、一度投稿するとだいたい4000人くらいが見てくれます。先日、アンケート企画をやってみたのですが、翌朝に新規で90件の問い合わせがありましたので、反響はまずまずですね」(大熊氏)

天板のバリエーションはとにかく豊富。素材、サイズ、デザインによって価格が変動する
天板のバリエーションはとにかく豊富。素材、サイズ、デザインによって価格が変動する