「高性能小型機」ブームが到来?
16年に発売された初代のiPhone SEもやはり、4インチという片手で持って画面の隅々まで正確に操作できるサイズ感が多くのユーザーに高く評価された。新iPhone SEでは、わずかながらも画面が大きくなったことを惜しむ声も聞こえてくる。
ただ初代機の発売から4年の時を経た現在では、デジタルエンターテインメントも相応の進化を遂げている。ギガビット級のモバイル通信環境を生かしてスマホで4K動画やAR技術を生かしたゲームが手軽に楽しめるようになった。故に大型バッテリーを内蔵し、高速通信や高精細なグラフィックスの描画を同時にこなすために、端末内部で発生する熱を効率よく逃がせる筐体(きょうたい)設計を確保すると、スマホのサイズは必然的に大型化する。
アップルは19年からモバイル向けの動画配信「Apple TV+」や定額制ゲーム配信「Apple Arcade」に代表されるコンテンツサービスをビジネスの柱に据えて、本格展開を始めた(関連記事「5G時代に動き出したアップル 3つのコンテンツサービスを解読」)。より大きな画面のiPhoneなら「モバイル向けコンテンツを楽しむときに高い没入感が味わえる」という、うたい文句を掲げてきたアップルにとって、小型でパワフルな新iPhone SEを現在のラインアップの中でどう意味づけるか迷う部分があるかもしれない。
新iPhone SEがヒットすれば、おそらくライバル他社も“高性能な小型機”を開発し、対抗馬としてぶつけてくるだろう。コンパクトなスマホを求める声は根強いため、バッテリー容量や5G対応との折り合いを付けながら各社がチャレンジしてくれば、成熟したスマホ市場に刺激を与える可能性は間違いなくある。