チューニングの基本に選んだU2の「One」

 「録音後にマスタリングされた音源ではなく、ミュージシャンの生の歌声はどんなだったのかなって。多くのミュージシャンは、こちらを聴かせたいと思っているはず。自分がそうだったから」と寺尾社長。そこで音作りのリファレンス用として選んだのがU2の「One」。寺尾社長にとって5本の指に入るほど大好きな楽曲だった。

 「U2のこの曲は、各楽器の倍音がすごく入ってしまった状態で録音されていて、普通のステレオで聴くと、とてもこんな音で演奏したんじゃないだろうと想像できる。イントロがギターのリフから始まるが、おそらくそのリフはギブソン系のギターと、VOXのアンプを使っているのだろう。『レスポール(ギブソンのエレキギター)』とVOXで甘ひずみさせているが、実際にエアーで聞こえてくる音はもうちょっとあったかい音がしていただろうなと思う。ボーカルのボノの声も、遠くにいるように感じられるミックスなので、それがきちんと前に聞こえるようなチューニングにしたかった」

寺尾社長のミュージシャン魂を詰め込んだ、まさに渾身のスピーカー
寺尾社長のミュージシャン魂を詰め込んだ、まさに渾身のスピーカー

 録音された音を忠実に再現するのがスピーカーの定石だが、そうしたいわゆる常識を破り、新しい提案をしていくのがバルミューダのやり方だ。同社の名を広く世に知らしめた、自然の風のような気流を生み出す“高級”扇風機「GreenFan(現在は『The GreenFan』)」や、香りや食感を大事にしたスチームトースター「BALMUDA The Toaster」なども、既存の製品を疑い、従来とは異なる価値観でユーザーの既成概念を壊すことによって誕生した。

 「バランスが取れているとか、周波数特性がフラットだとか、そんなことは関係ねえって言って作った。完全にボーカル至上主義の音作り。おそらく音作りのプロが、『BALMUDA The Speaker』の音の設定を知ったら、明らかにクレイジーだと思うはず。ただ、この光とボーカル重視の音作りが合わさると、同じ空間でミュージシャンが本当に歌っているような近さに感じられる」

 そこまで振り切って大丈夫かと不安にもなるが、そのやり方でいくつもの製品をヒットさせてきた寺尾社長の言葉だけに、つい引き込まれ、期待が高まる。