話題の商品やサービスを消費者目線で検証し、ヒットの理由を探る新企画。第1回はサンコー「おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器」。初回入荷分が発売からわずか2日で売り切れ、直販サイトでは入荷待ちの状態が続く。素早く炊ける“時短”と、コンパクトで洗い物を減らす扱いやすさがヒットの要因だ。

短時間で炊きたてのご飯が食べられる
短時間で炊きたてのご飯が食べられる

オフィスで炊きたてご飯が食べられる

 サンコー「おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器 TKFCLBRC」(以下、おひとりさま用超高速弁当箱)は、1合炊きのマイコン炊飯器。短時間で炊ける超高速炊飯機能と、そのまま食べられる弁当箱のような細長い形、使用後は水で丸洗いできることなどが特徴だ。直販価格は6980円(税込み)となっている。

 発売は2019年12月。初回入荷分が2日間で売り切れた。発売から約2カ月半で、受注分を含め2万台に到達する見込みで、同社の炊飯器としてはこれまでにない勢いで売れているという。

サンコーの1合炊き炊飯器、「おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器」。計量カップとスイッチ付きの電源コードが付属する
サンコーの1合炊き炊飯器、「おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器」。計量カップとスイッチ付きの電源コードが付属する

 最大の魅力は超高速炊飯機能だ。0.5合なら約14分、1合なら約19分半で炊き上がる。0.5合は茶わん1杯相当なので、一人暮らしなら帰宅して15分ほどでご飯を炊いて食べられる。

 サンコー広報部の﨏(えき)晋介部長は「大手メーカーにはない強みを出すため、様々な特徴を持たせた製品を開発していくうち、キッチンに行かなくても作って食べられる卓上調理機器の需要が大きいことをつかんだ。卓上用の焼き肉器、スチーマー、フライヤーなどを発売し、その流れでコンパクトな炊飯器というアイデアが出てきた」と一人用炊飯器を開発したきっかけを語る。

 一人用炊飯器の最初の製品は、17年9月発売の「蒸気で炊く! お一人様用ハンディ炊飯器 MINIRCE2」(以下、お一人様用ハンディ炊飯器)だ。これは水蒸気で加熱する炊飯器で、炊飯と同時に汁ものやおかずの温めができる。

「蒸気で炊く! お一人様用ハンディ炊飯器」(直販価格5280円、税込み)は陶器製の容器が2つ入る。片方で0.65合の米を炊飯しながらもう片方でおかずを温めることもできる
「蒸気で炊く! お一人様用ハンディ炊飯器」(直販価格5280円、税込み)は陶器製の容器が2つ入る。片方で0.65合の米を炊飯しながらもう片方でおかずを温めることもできる

 お一人様用ハンディ炊飯器は、「洗い物が少なくて済む」というメリットも受けて想定以上に売れた。コンパクトさを生かしてオフィスに持ち込んで昼休みに炊きたてのご飯を食べる人も現れたが、炊飯に約50分かかった。そこで、コンパクトでそのまま食べて洗えるというコンセプトはキープしつつ、高速炊飯にこだわった製品の開発に取り組むことにした。

 「普通の3合炊き炊飯器を持っていても1合しか炊いていなかったり、3合炊いて食べた残りは冷凍したりしている人がいる。それなら必要な分だけサッと炊ける炊飯器が売れるのではないかと考えた」(﨏部長)

気温と水温が炊飯時間に影響

 自慢の高速炊飯機能がどれだけのものか、使い勝手を試してみた。内釜は一般の炊飯器同様のコーティングが施されていて、目盛りが付いている。細長い形状で米はとぎづらいため、無洗米を1合使用した。米とペットボトルの水を入れて蓋をしたら、電源コードをつないでスイッチを入れる。側面にランプがあり、炊き上がると色が赤から緑に変わる。

米を入れ、内釜の目盛りに合わせて水を注ぐ
米を入れ、内釜の目盛りに合わせて水を注ぐ
側面のランプで炊飯中かどうか分かる
側面のランプで炊飯中かどうか分かる

 結果は、1合炊くのに約23分半かかった。さらに数分蒸らしたので、食べるまで26~27分かかったことになる。一般の炊飯器の早炊き機能は30分以上かかるものが多いので高速炊飯に偽りはないものの、やや期待外れというのが最初の印象だった。しかし、これはどうやら気温と水温が関係しているらしい。「炊飯時間は外気温や水温で変わってくる。早く炊くためには特に水温が大事」(﨏部長)という。

 確かに季節は冬で室内は肌寒いし、自動販売機で買ったばかりの冷たい水で炊いていた。そこで室温まで戻した水で1合炊いてみたところ、今度は21分弱で炊けた。これなら満足できる超高速ぶりだ。炊飯中は静かで蒸気やにおいがそれほど出ないところも好印象で、例えばオフィスで利用するときに周りの目を気にしなくて済みそうだ。

細長い弁当箱のような形で、そのまま食べやすい
細長い弁当箱のような形で、そのまま食べやすい

丸洗い対応で洗い物を減らす

 肝心の味だが、米のおいしさを十分引き出せていると感じた。食感や色つやも普通の炊飯器で炊いたものと遜色なく、おいしく食べられた。「開発段階で、日本の米と水に合わせた炊き方ができるよう、調整に調整を重ねた」(﨏部長)そうで、そのこだわりがうかがえる炊き上がりだ。

 弁当箱のような形をしているのでご飯茶わんを使わずにそのまますぐ食べられるのも便利だ。そこにレトルトのカレーをのせてカレーライスにしたり、コンビニで買った総菜をのせて丼物にしたりして食べることもできる。ただ、この本体形状は狙ったものではないそうだ。底面全体にヒーターを張り巡らして短時間で炊くために最適な形を追求した結果、このような形になった。食べやすいのは副次的効果というわけだ。

上におかずをのせて食べることもできる。おかず用のお皿を洗う手間が省ける(﨏部長提供)
上におかずをのせて食べることもできる。おかず用のお皿を洗う手間が省ける(﨏部長提供)

 使用後に水で丸洗いできるのも楽でいい。洗うために蓋を分解するのが少し面倒だったが、自宅でもオフィスでも手早く洗って乾かせるだろう。電源コード込みで840gと軽く、コンパクトで置き場所をそれほど取らないため、使わないときは戸棚の片隅や、オフィスならデスクの引き出しに入れておける。

電源コードの接続部に防水用のゴムキャップが付いていて、これを閉じた状態で洗う。蓋は分解して洗う
電源コードの接続部に防水用のゴムキャップが付いていて、これを閉じた状態で洗う。蓋は分解して洗う

 おひとりさま用超高速弁当箱は、高速炊飯、そのまま食べて洗える扱いやすさ、収納しやすい軽量コンパクトさが魅力。味や食感も満足できるもので、自宅やオフィスで炊きたてのご飯をすぐ食べられる高速炊飯器という狙いを実現できていると感じた。市場には1.5合炊きクラスの炊飯器は4000円前後からあり、6980円という価格は決して安くはないが、この製品のコンパクトさと扱いやすさは大きな強みになる。

 一人暮らしの大学生やビジネスパーソンだけでなく、大きい炊飯器を扱うのが難しくなってきた高齢者にも向いているだろう。「オフィスに持ち込んで使ったり、車中泊やキャンプに携帯できる炊飯器として購入する人もいる」(﨏部長)など、ユーザーの使い方は広がりを見せている。単なるおひとりさま用にとどまらない人気を獲得しそうな製品だ。

(写真/湯浅英夫)