本特集ではこれまで3人の現役プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&Gジャパン)マーケターに聞いた、過去の最大の失敗とその乗り越え方を紹介してきた。今回はそれらの経験談から浮かび上がってきた、3つの重要ポイントを紹介しよう。P&Gマーケターが失敗から学び、成功につなげられる組織と仕組みとは?

 連載第1回でP&Gジャパン執行役員の小林洋貴アソシエート・ブランド・ディレクターが引用した、南アフリカ共和国の第8代大統領ネルソン・マンデラ氏の言葉、「I never lose. I either win or learn.(私は決して負けない。勝つか学ぶかのどちらかだ)」が示すように、P&Gには「失敗を学びとする企業文化」がある。これが最初のポイントだ。「考えてやったことであれば、失敗したとしても、次の成功につなげることで会社はきちんと評価してくれる」と電気シェーバー「ブラウン」担当の大江文アソシエート・ブランド・ディレクターは言う。

 そうした評価への考え方が、脈々と受け継がれている。P&Gジャパンベビーケア担当の瀬戸温夫アソシエート・ブランド・ディレクターは、「自分の部下が失敗したとしても、それだけで(マイナスの)評価をすることはない。そこから何を学んで、次にどうつなげていくか。次の施策が成功するかしないかを含めて評価する」と語る。そして自分自身も「失敗を残り超えたことが評価されて今のポジションがある」と続ける。失敗しても挽回すれば評価される。その企業文化がマーケターの挑戦を後押しする。

 また、P&Gのブランド・マネジャーはブランドの全権を握ると言っても過言ではないほどの裁量権を持つ。入社してアシスタント・ブランド・マネジャーとして配属されると、すぐに製品単位で裁量を持って成長させることが任務として与えられる。収益責任を負う代わりに、自らの意思でマーケティングの指揮を取れる。だから自身の考えに基づき、リスクをとって挑戦できるわけだ。

 その代わり失敗の要因分析は厳しく求められる。「P&Gでは失敗したときに、そのままではいさせてくれない。施策ごとの機能の有無を分析しなければならない。(データ上)売れなかった。じゃあどうするかというのを商品発売の一週目、二週目で改善案を考える必要がある」と瀬戸氏は言う。失敗しても、それを単純に責めることはしない。要因を追求することが「グロース・オポチュニティー(成長機会)になる」(小林氏)という考えだ。

 加えて、そうして分析した失敗の要因を、社内で共有することが当たり前になっている。大江氏は学生時代に就職活動で参加したP&Gの学生向け説明会で、失敗から学びを得て成長した過去の経験を話すP&G社員を目の当たりにして、その企業文化にほれ込んで就職を決めた(関連記事「「P&Gスタンダードに固執し過ぎた」失敗を生かして洗剤を成長」)。

 もちろん、実際に入社してもそれは変わらない。「失敗を含めて、会社全体で(知識を)シェアしていくという文化をP&Gは持っている。(知識という)長いバトンを渡し続けている」と小林氏は自社の社風を表現する。

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