クラウドファンディング(クラファン)を活用したデザイン思考型商品開発の特集2回目は、バタフライボード(横浜市)。「携帯型ホワイトボード」という新しい分野で成功した秘密は、ユーザーの意見に耳を傾けるデザイン思考的アプローチにある。だが、起点はあくまで自分自身が欲しいと思うかどうかだ。

クラウドファンディングの「Makuake」で最初に資金を集めた「バタフライボード」の商品。目標支援額30万円ながら約277万円に達した(写真提供/バタフライボード)
クラウドファンディングの「Makuake」で最初に資金を集めた「バタフライボード」の商品。目標支援額30万円ながら約277万円に達した(写真提供/バタフライボード)

 クラウドファンディングで商品を開発・販売しようとする企業の多くは、試験的に1回か2回しか使わないという場合が少なくない。ユーザーの反応を探る市場調査の代わりに活用する例もあるだろう。そんななか、企業の開発・販売のプロセスの一環としてクラウドファンディングを明確に位置付けているのが、バタフライボードだ。クラウドファンディングで商品を発表すると、ユーザーの意見を反映させて開発し、さらにクラウドファンディングで発表する。過去6回で総額6600万円を集めた。約1万2000人のユーザーがいる。

 そのスパイラルがうまく回るのは、クラウドファンディングのサイトの機能やフェイスブックなどネット経由でユーザーニーズを聞くだけでなく、約800人いるユーザーコミュニティーで直接に意見を交換しているからだ。コミュニティーメンバーを中心にしたユーザーイベントも開催し、バタフライボードから商品開発の意図を説明したりユーザーから商品に対するニーズを聞いたりして、コミュニケーションを深めている。さらにヘビーユーザーを個別に訪問し、より深くニーズを聞き出すこともある。ユーザーは自分たちのニーズをしっかりと聞いて開発に反映させるバタフライボードの姿勢を評価し、一緒に開発に参加している気持ちになるようだ。商品の「ファン」になり、繰り返し購入するユーザーも多いという。

【特集】デザイン思考型 ヒット商品開発
【第1回】
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【第2回】
クラファンで6600万円、自分起点のデザイン思考型開発で成功←今回はココ
【第3回】
薄い財布で納品1年待ち 建築家がクラファンで1億6000万円調達

 このようにユーザー視点に立ち、課題やニーズをつかんで、その解決方法を探るという手法はデザイン思考に近い。だがバタフライボードの場合、単にユーザーニーズを商品開発の起点にするのではない。最も重視している点は福島英彦社長自身が「欲しい」と思うかどうかにある。ユーザーニーズばかりを受け入れるようでは「作り手」の意思や熱意が希薄になりかねない。ユーザー視点でありながらもユーザーニーズをそのまま受け入れるのではなく、そのニーズに対して福島社長が納得できるかどうかを考えて判断している。商品開発の起点は、福島社長にある。

どこにも売っていないから自分で開発

 「バタフライボード」シリーズを開発するきっかけも、「自分が使いたいホワイトボードがない」と福島社長が感じたことだった。携帯型のホワイトボードとして考案し、独自開発した特殊なマグネットでホワイトボードの端面を連結できるようにした点が特徴だ。例えば「バタフライボードPro A3」の場合、A3判の大きさのホワイトボードを2枚をつなげることでA2判のホワイトボードとして使える。2枚でもわずか270グラムしかなく、持ち運びしやすい。

 オフィスの会議室でミーティングを行うとき、大きなホワイトボードは保管や設置に場所を取り、社外のワーキングスペースでディスカッションするときも運搬しにくい。かつては音響機器メーカーのエンジニア出身ながらマーケティングや事業開発などの業務も担当していた福島社長は、自身の経験から携帯型のホワイトボードが欲しかった。しかし、どこにも売っていないので、自ら“持ち歩けるホワイトボード”のアイデアを考案したという。

 会社勤めの傍ら試作品を開発し、2015年にクラウドファンディングの「Makuake」で資金を集め、最初のA4判の「バタフライボード」を発表した。このときの目標支援額は30万円だったが、約277万円を集めた。Makuakeでは自分で撮った複数の商品写真を動画のように見せて、マグネットで接続できるという点を強調。「こんなホワイトボードを作りたい」という福島社長の思いを表現した。

 資金を集めて商品化すると、今度はユーザーから「こんなサイズにしてほしい」「こんな機能が欲しい」といった声が集まるようになった。そうした意見を取り入れ、改良した試作品を再度Makuakeで発表。資金を集めて16年に2つ目の製品としてA5判を追加。そして18年になってバタフライボードとして起業し、同年11月にはMakuakeでさらに資金を調達してA3判を開発した。

「バタフライボードPro A3」のMakuakeの画面と実際の商品。目標支援額30万円で1000万円以上も集まった(写真提供/バタフライボード)
「バタフライボードPro A3」のMakuakeの画面と実際の商品。目標支援額30万円で1000万円以上も集まった(写真提供/バタフライボード)