
リスキリングを考えているマーケターに向け、法政大学経営学部の西川英彦教授が解説する「企業のユーザーイノベーション活用」。後編はユーザーイノベーションの活用に成功した企業の事例を紹介する。成功に導くためのコツやユーザーイノベーションの活用で得られる効果、企業が陥りがちな課題などについて聞いた。
前編ではユーザーイノベーション活用の代表的な手法である「リードユーザー法」と「クラウドソーシング法」について説明しました。今回はそれぞれの方法を実施した企業の事例を紹介します。
▼前編はこちら これからのマーケターは「ユーザーイノベーションの活用」が鍵にリードユーザー法で成功した3Mとワークマン
市場性の高い製品を開発している先端的なユーザーを「紹介の紹介」によって探し、革新的な製品開発につなげるのが「リードユーザー法」です。この手法でユーザーイノベーションに成功した良い事例がスリーエム(3M)で、医療分野で新たな産業材を生み出しました。
従来、外科手術の際に利用される顔面皮膚感染の予防法は、どの患者に対しても、1タイプで対応していました。3Mは、リードユーザーの「紹介の紹介」によって、最終的に顔面皮膚感染の予防に精通している舞台メークの専門家へとたどり着きました。ターゲット市場が医療であれば、まず舞台メークの専門家に話を聞きに行こうなどとは思いませんよね。その結果、患者一人一人の症状に合わせて対応する、感染症予防の商品を開発できたのです。
外科手術は、頻度で言えば1人の患者に対しほぼ一度きりです。しかし舞台メークは、毎日行っているので様々な知見があります。そのノウハウを生かすことで、新たな商品が生まれたのです。こうした、思いもよらない市場とつながれるのがリードユーザー法の醍醐味です。
事例の2つ目が、作業服専門店のワークマンです。同社は衣料品に注目し、高性能で低価格という戦略でアウトドア用品・衣料品市場への参入に成功しました。その際に活用したのが、「紹介の紹介」ではなく、ネットを利用したリードユーザー法と言えるものでした。
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