
プリファード・ネットワークス(東京・千代田)執行役員CMO(最高マーケティング責任者)の富永朋信氏が2021年を振り返る。マーケティング領域で注目された「Brand purpose(ブランドパーパス)」という言葉から富永氏が得た気付きとは。そして「人事とマーケティングの仕事の領域は近接している」と話す。その時代にマーケターがなすべきことを聞いた。
不毛なディベートは必要ない
「ブランドパーパス」という言葉が近年、注目を集めています。私の周りでは、2001年から08年まで米P&Gのグローバル・マーケティング・オフィサーを務めていたジム・ステンゲル氏が「マーケティングアジェンダ2019」で紹介してから、この言葉を聞く機会がぐっと増えました。
それ以来、私はよく「ブランドパーパスと企業における企業ミッションの違いは?」という質問を受けます。
ミッションとブランドパーパスという2つの概念に限らず、「Mission・Vision・Value(ミッション・ビジョン・バリュー、以下MVV)」と、ブランドを記述するための概念群(「Brand Value Proposition(ブランドバリュープロポジション)」や「ブランドパーパス」など)は何となく似通っていて、あまりスッキリしません。考えを巡らせた結果、ブランドパーパスとミッションの間に大きな差異はなく、その2つに限らず、MVVとブランド関連の概念群はほぼ同じことを、一つの会社の中で言い換えているだけだ、という考えに至りました。
マーケティング部門という視点から見ると「ブランド」から始まる言葉になるし、経営企画室から見たら「MVV」のほうがなじみ深いでしょう。ある企業の姿をマーケの眼鏡をかけて言語化するとブランドパーパスやブランドバリュープロポジションに見えるし、経営企画の眼鏡であればMVVに見える、というわけです。
細かいことを言うと、たとえば「バリュー」という言葉について、経営企画側は行動規範の基になる「価値観」を指し示している、一方でブランド側はブランドが提供する「価値」のことを言っている、など言葉の作法に違いはありますが、全体的な意味の構造としてほぼ同じものを内包していると思います。
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