プリファード・ネットワークス執行役員CMO(最高マーケティング責任者)の富永朋信氏が考える「2020年の総括と21年の展望」の後編。20年は新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪・パラリンピックの開催延期が大きな注目を浴びた。いまだ21年開催のジャッジについてさまざまな報道もある中、富永氏は「たとえ中止になったとしてもそこまで悲観する必要はない」と前を見据える。
「参照点(基準となる点)」という考え方
2020年は東京五輪・パラリンピックを開催するか否かが大きな注目を浴びましたが、結果的に延期になりました。本来なら日本には世界中から多くの人々が集い、にぎわう年になるはずだった。もし「中止」の決断が下っていれば、経済的なダメージが生じたものと思われます。しかし今後仮にそうなったとしても、そこまで悲観する必要はありません。これは「ビジネスパーソンが働く上でボーナスが支給されない」という話に似ています。
毎年ボーナスが支給されている中、「今期はボーナスが出ない」となれば当然ダメージは受けますが、多くの場合最終的には「仕方がない」と落ち着くでしょう。なぜならば賞与(ボーナス)とは、定期給の労働者に対し定期給とは別に支払われる特別な給料です。業績が悪ければ支給されなくても致し方ありません。しかし「来月以降は給料が減額される」となると、おうように構えているわけにはいかない。この2つで考えると、オリンピックの話は一過性のイベントであり、前者に近いケースですよね。
オリンピックは既に決定しているものだと皆が解釈し、そこが基準になってしまっているため、それが中止されることはあたかも「損失」だと感じます。しかしオリンピックの位置付けをどう考えるかにより、実のところ心理的なダメージは大きくも小さくもなるわけです。
本当の当事者であるアスリートの方々は、オリンピックを目標に己と闘っているわけですからその悲しみは大きいでしょう。その一方で社会全体や経済の話となれば、これは前を向いていくしかないですよね。そのための技術として、こういった考え方は引き出しに入れておいて損はないと思います。
今の話は「参照点」という考え方に通じます。例えば30歳で年収1000万円に到達したとしましょう。多くのビジネスパーソンは「やった、ようやく大台に乗った!」と喜びますよね。そうなると途端に自分や、自分の銀行口座を含めて誇らしく感じる。そんなある日、年齢が2つ下の後輩が年収1050万円もらっていることを知ってしまう。そうなると、途端に自分の給与明細が取るに足りないものに感じるようになります。
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