プリファード・ネットワークス執行役員CMO(最高マーケティング責任者)の富永朋信氏に、2020年の総括および21年の展望を話してもらった。コロナ禍で進化したと叫ばれるネットを介したコミュニケーションだが、富永氏は「手放しで賛成と言えない」と考える。その理由とは。

プリファード・ネットワークス執行役員CMOの富永朋信氏
プリファード・ネットワークス執行役員CMOの富永朋信氏

 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、世の中のさまざまなことが変化したと叫ばれていますが、個人的には「実は変わってないことのほうがはるかに多い」と考えています。根源的なことをいえば、人間はおなかが減りますし、夜になったら眠くなる。外出制限などで一部のビジネスに影響はあったと思いますが、それによって世の中全体が大きく変化したというのはあまり腑(ふ)に落ちないというのが私の本音です。

人と対面して得られる情報はとても豊か

 新型コロナの影響により、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んだといわれます。しかし「Zoom」や「Microsoft Teams」といったコミュニケーションツールは以前からあり、それこそ先進的な人はコロナ前から使用していました。つまり、これまでもツール自体はあったけれど、仕事で必要性が生まれたため多くの人が使うようになっただけ。これを通じて、特に緊急事態宣言中はリアルで会わなくても、一部の職種については仕事ができるという気付きがありました。

 しかしオンラインツールがこれだけ普及し、私も毎日のようにオンラインで会議を行っていますが、オンラインがリアルなコミュニケーションよりも優れていると感じたことはほとんどありません。“移動時間が削減できる”ことをメリットとして挙げる方もいますが、それは単に副次的な効果であり、オンライン会議そのものの良さとはまた違うことです。

 人とのコミュニケーションは、ボディーランゲージや些細(ささい)な表情から受け取るものが大きい。言い換えれば、人と対面して得られる情報はとても豊かだということです。デジタルコミュニケーションで得られる情報は、基本的にカメラ1つで映されるそれほど解像度も高くない映像と音声しかありません。それに比べてリアルな場での会議は、いろいろなパスを通じて情報が多面的に伝わるためインフォメーション・リッチで、人と人との情緒的な部分も深いレベルで交換できます。

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