「なぜ自分たちがやるのか」を考える

 ファクトリエが提携する55の工場で働く職人で、シャツや靴、ソックスなどある1つのアイテムについてであれば何時間でも話せる人のことを、愛を持って「○○バカ」と表現しています。彼らは1つの製品に特化したものづくりを続けてきた職人なので、工場で話をし始めると長いんです(笑)。みんな服が好きだから。私はそういう人のほうが信用できますし、個人的にもその人たちが作った服を着たくなります。

 メード・イン・ジャパンの衣料品はどんどん減ってきています。1990年代は日本で流通する衣料品約50%は国産でしたが、現在では約2.5%と大幅に減少しています。そんな中、ファクトリエは100%国内生産です。提携している55の工場が生き残っている理由は非常に高い技術力があること。そして私たちが工場と提携を結ぶ上で大事にしている基準は、そこで働く人々が前向きなマインドを持っていること。(前述の講師を務めている学校の)生徒たちの中でも、ものづくりが好きな子は多く、職人になるべく工場で働く道を選ぶ子がいます。「洋服が好き」「つくることが好き」というポジティブな気持ちは、ぜひ持ち続けてほしいと思います。

 アパレル業界を志す若者向けにある事例を紹介します。米スターバックスは「我々の価値は家でも会社でもない“第3の場所”(サードプレイス)を提供しているということ。デリバリーは我々のミッションやビジョンには関係ない」として、中国でデリバリーに参入せず、売り上げを落としたことがありました。しかし売り上げ低下を受け、デリバリーをスタートし、売り上げが急増しました。

 デリバリー参入の際、スタバは価値観をしっかり再考したそうです。「家の中も第3の場所になり得る」と再定義し、コーヒーを届ける人に「スタバ専用のスタッフ」を雇ったのです。コーヒーを両手で手渡しし、お辞儀をして帰る。ただ商品を運ぶだけではなく、店舗同様の体験が味わえるという価値を加えました。

 時代のニーズをくみ取ることは大切なことですが、右へ倣えで行動するのではなく、自分たちなりのやり方を模索していくことが重要です。「今はこれがはやっているらしいよ」と安易に飛びつく前に、「なぜ自分たちがこれをやるのか」についてしっかり考える癖をつけること。その上で納得できるなら実行すればいいし、自分たちのビジョンに当てはまらないと思ったらやらない選択も間違いではないのです。

ライフスタイルアクセント代表取締役でファクトリエ代表の山田敏夫氏
ライフスタイルアクセント代表取締役でファクトリエ代表の山田敏夫氏

(構成/中山 洋平)