コロナ禍で苦境に立たされているアパレル業界。リモートワークの普及や外出自粛を余儀なくされたことで、おしゃれをして出かける行為が日常ではなくなってしまった。ライフスタイルアクセント(熊本市)代表で自社ECサイト「ファクトリエ」を運営する山田敏夫氏は、この状況をどう見ているのか。
業界期待の「オーダースーツ」に大打撃
新型コロナウイルスの感染拡大はアパレル業界にも大きな影響を与えました。業界全体では、在宅勤務を余儀なくされたホワイトカラーの方々が多くいらっしゃったことを受け、スーツやワイシャツ、レザーシューズといったビジネス向けアイテムの売り上げがすっぽりと抜け落ちた印象です。
我々の業界では、オーダースーツがここ最近の“大きな光”と呼べる商品でした。売り手も高い単価で提供でき、買う側のお客様も世界に1着のスーツを手にすることができ、大きな喜びを得られます。言ってみれば両者がウィンウィンの関係です。
オーダースーツはこの1~2年で飛躍的に成長を遂げた市場でした。コナカが「DIFFERENCE」、オンワード樫山が「KASHIYAMA the Smart Tailor」を立ち上げるなど、多くの企業がオーダースーツの切り口で精力的にビジネスを展開しています。しかし緊急事態宣言が発出される少し前の20年3月あたりから、ぱったりと注文がストップしてしまったのです。
中でもDIFFERENCEは急速に店舗拡大を進めていて、東京の六本木や青山など一等地にも出店していました。オーダースーツを4万~5万円で購入できる手軽さが受け、店舗拡大していこうとした矢先でのコロナ禍。同じアパレル業界に身を置く者として、世の中が180度変わってしまった感覚でした。何と言ってもスーツが1年間で1番売れる時期は3月ですから。
この業界はスーツをはじめとする重衣料というジャンルが売り上げ全体の6割を占めます。重衣料はコートやダウンジャケットなども含みますが、その中でも売り上げの多くはスーツが占めています。例えば5000円のシャツを10枚販売しても5万円の売り上げですが、スーツは安くても1着で5万~10万円の売り上げを確保することは難しくない。効率よく売り上げを確保できるのです。
秋以降、重衣料がどこまで売り上げを伸ばせるのか正直予測できない状況です。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない限り、ある一定数の企業は在宅勤務を推進するでしょう。そうなると重衣料のビジネスは引き続き影響を受けます。
3月になればスーツが売れる。冬になればコートやダウンジャケットが売れる――。これまで業界が当たり前だとしていたビジネスプランが、このコロナ禍で崩壊してしまったのです。
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