ソニー・ミュージックレーベルズでマーケティングを担当する梶望氏が考える「withコロナ時代のエンターテインメント産業の未来とマーケティング」。後編は梶氏が新たに担当することになった「いきものがかり」とのやり取りで得た“気付き”を紹介。新型コロナウイルスの影響で分断と孤独の脅威にさらされた人々が求める音楽の形とは。
これから我々は新型コロナウイルスと共存していかなくてはなりません。短期的にはライブやイベント活動の自粛が求められますし、巣ごもりせざるを得ない状況が続くでしょう。その状況を踏まえ、短期的なマーケティング戦略としては、テレビやスマートフォン、SNS、サブスクリプションサービスの攻略に注力していきます。その場合、ある程度マーケティングのテクニックでカバーするしかないと思っています。
新型コロナの影響で音楽業界が失ったものは、端的に言うと「場所」です。CDを手渡しで売る場所、ライブをする場所、ファンと直接会える場所、あらゆる場所がなくなった。メディア収録もリモートで行っていますが、以前のように皆で集まってスタジオ収録するという場所もなくなりました。そうした中、新たに増えたもの。それは自宅にいる時間と、そこにいる人の精神領域です。
しばらくの間はアーティストがファンと交流するためのツールは、オンラインが主流になるでしょう。そこで求められるのは、リアルタイム感とクリエイティブの力です。「リアルさ」「かっこよさ」「洗練された作品」など、アーティストがどの手法を選ぶかは自由ですが、時代の空気と本質を的確に読んだクリエイティブを考えられる人が、このwithコロナ時代を生き抜いていくのでしょう。今だからこそできる表現が問われてくると思います。
新型コロナウイルスの一番の脅威は「分断」
新型コロナウイルスが人々に及ぼす影響で、一番の問題だと思っているのは社会の「分断」です。この分断は既にあらゆる場面で起こっていて、こうして遠隔で取材を受けているのも一種の分断ですし、マクロな視点で見れば欧米と中国の関係もそう。ミクロな視点で見れば、これからますます社会格差が広がっていき、個人間の分断も生まれていくでしょう。これこそ新型コロナウイルスが我々に与えた一番の脅威ではないでしょうか。そして、分断が進んだ先には「孤独」との闘いが待っています。
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