新型コロナウイルスの影響で、スポーツ界も大きな打撃を受けている。バスケットボール男子Bリーグは、2020年3月14日~4月1日までB1、B2の計131試合の無観客実施、無料放送・配信を決定した。チームの対応について、日経クロストレンドのアドバイザリーボードで熊本バスケットボール代表取締役の湯之上聡氏に話を聞いた。

新型コロナウイルスの影響は、スポーツ界にも押し寄せている
新型コロナウイルスの影響は、スポーツ界にも押し寄せている

 Bリーグの延期が発表されたときは、「やっぱりきたか」と感じました。というのも、平均観客動員数が2000人ほどに対して、2020年2月22、23日のホームゲーム時には1100人くらいまで減っていたので、警戒していました。

 選手は普段通り、来るべきときの試合に向けて、コンディション調整を行っています。刻一刻と変わる状況に応じて、運営チームが対応策を考え準備を進めているところです。

 16年の熊本地震のときも、活動できない時期がありました。設立以来、地域の方に支えられ活動ができていたので、その方々のために今度は私たちが支えになろうと、ボランティア活動をしました。当時は震災の被害が大きかった益城町にある益城町総合体育館を拠点としており、そこで避難所運営の手伝い、支援物資の手分けや運搬、がれきの撤去、介護施設の訪問などをしていました。益城町は公共の体育館が避難所となったので、自前のバスケットリングを学校の校庭や空き地に持ち込み、子供たちと一緒にバスケットボールをして遊んだりもしました。

 このときはマーケティングのことを考える余裕などありませんでしたし、今回も似たような状況だと思っています。ただ、スポーツやスポーツ選手が届ける影響の大きさは計り知れません。こういうときだからこそ、さらに地域のために活動すべきだと思っています。

売り上げは3000万円減

 20年3月11日、B1とB2のリーグ戦を「無観客試合」で3月14日から再開することが決定しました(※)。チームとしては、中止になってしまうと後に控えるプレーオフ進出に影響を与えかねなかったので、無観客であれ試合ができるのはよかったなと。バスケットLIVEなどで無料配信も決まったので、試合で力を発揮し、元気な姿を見せることが、地域のためだと考えています。

 とはいえ、スポーツチームの運営にはお金がかかります。収入の約2割を占めるのが入場料です。今回の無観客試合で、1000万円ほど収益が無くなる見込みです。すでにチケットを買っている方(シーズンシート購入の方を含む)への払い戻し対応もあるため、損失はさらに大きくなるでしょう。

 また、熊本ヴォルターズU15というユースチームを持っていますが、練習や試合などの活動も1カ月できていません。スポンサー営業も動けず、目標まで1000万円ほど及んでいません。通常、会場で販売しているグッズに関しても、ECサイトでの販売経路のみになっています。おおよそ2500万~3000万円ほどの売り上げ減だと予測しています。毎年、シーズン終盤になるにつれて盛り上がり、集客増、売り上げ増が見込めていただけに、厳しいものがあります。

 (震災時と違い)実際にサポーターの皆さんとお会いして元気を届けるのは難しいので、熊本ヴォルターズ公式Twitterアカウントをうまく使って元気を届けられればと思います。20年3月上旬から「#脱ヴォルターズロス」というタグをつけ、西井辰朗ジェネラルマネジャーを中心に設立1年目の懐かしい写真などを発信しています。これに多くのブースター(熊本ヴォルターズのサポーターの呼称)が反応し、写真の投稿も増えています。

 無観客試合のときは、Twitterでブースターから応援メッセージを募集し、集まったツイートを選手ロッカールーム近くに掲示する予定です。無観客であっても、一体感をつくり、この危機を乗り越えたいと思います。

熊本ヴォルターズで司令塔を務める石川海斗選手
熊本ヴォルターズで司令塔を務める石川海斗選手

(写真提供/熊本バスケットボール)

※編集部注
2020年3月17日に開催されたBリーグの記者会見で、20年3月20日~4月1日までB1、B2の計95試合の中止を発表しました。[2020/3/18 12:00]

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