日経クロストレンドのアドバイザリーボードがさまざまな分野について意見する連載「アドバイザリーボードの『先見』」。今回はアタラシイものや体験の応援購入サービスMakuake(マクアケ)を運営するマクアケの中山亮太郎社長が考える「クラウドファンディングビジネス マクアケの現在と未来」。
設立当初、私の頭の中でも「クラウドファンディング」という概念を指す言葉を、産業支援のための「資金調達」と捉えていました。しかし、昨今ではクラウドファンディングという言葉そのものが“バズワード”として浸透し、目的やニーズによって「投資信託」「予約販売」「寄付」など捉え方が多様化しています。その言葉に踊らされていたことが、我々の成長スピードを遅らせていました。
「クラウドファンディング」はメーカーにとって関係のないもの
というのも創業当初、何百社、何千社と掲載企業を求めて探しましたが、相手に響かないことの連続でした。それはなぜか。メーカーはクラウドファンディングという言葉を聞くと高い確率で“自分たちには関係がないこと”だと判断していたのです。投資や募金をしてもらいたいわけではなく、メーカーは単純にものを売りたい。企業のニーズに対して、我々のソリューションがかみ合っていませんでした。
気づきを得たのは設立して1年ほどたってからです。ベンチャーの時計ブランド「Knot(ノット)」(東京都武蔵野市)の遠藤弘満社長から「Makuakeは資金調達の場ではない。メーカーにおいては“ものを作る前に売ることができて、実績も作ることができる(=テストマーケティング)”のは中山さんが想像しているよりも価値があること」だと言われました。続けて、ソニーも「新商品をテストマーケティングしたい」と我々を求めてくれました。(当時)設立数カ月のベンチャー企業と大手老舗メーカーが同じことを求めていたのです。これこそがマーケットのニーズだと気づきました。
Makuakeを使う利点は、次の5つだと思っています。
- テストマーケティングができる
- PR、初期顧客の獲得
- 販売実績を作れる
- 在庫リスクの軽減
- ものを作るのに必要な費用を集める
これらを直接知ってもらうにはどうしたらいいのか考えたとき、我々はクラウドファンディングという言葉との付き合い方のスタンスを変えました。テストマーケティングやインサイトの発掘ができるサービス。これはクラウドファンディングという概念が作った話ではなく、紛れもなくMakuakeがリードして作ったサービスです。
つまりメディアや評論家の声ではなく、第一に現場を見てニーズを認識したのです。この決断が功を奏し、事業は大幅に成長しました。クラウドファンディングと呼ばれることに関しては否定しませんが、我々は「アタラシイものや体験の応援購入サービス」と銘打ち、さらなるものづくりの創出に励んでいます。
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