日経クロストレンドのアドバイザリーボードが、さまざまな分野について意見する新連載「アドバイザリーボードの『先見』」。今回はアジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ブロガーの徳力基彦氏に「口コミマーケティングの未来」について話を聞いた。

アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ブロガーの徳力基彦氏
アジャイルメディア・ネットワーク アンバサダー/ブロガーの徳力基彦氏

 口コミの未来を語る上では、ステルスマーケティング(ステマ)について触れないわけにはいかないでしょう。ステマとは消費者に宣伝であることを伏せ、個人や企業が中立の立場を装い、商品や作品、サービスを評価する広告・宣伝手法のことです。

 ステマが大々的に問題となったのは2012年のこと。飲食店レビューサイト「食べログ」で、好意的な口コミを投稿する“やらせ”営業をする業者が多くいたことが発覚した事例がありました。最近では、19年12月に起こったウォルト・ディズニー・ジャパン(以下、ディズニー)の「アナと雪の女王2」のステマ騒動が注目されました。広告代理店などから依頼を受けた7人のWeb漫画家が、映画の感想ツイート用のハッシュタグを付けて一斉に感想漫画をSNSに投稿した際、広告やPRであることを示す表記が漏れていたのです。これが騒ぎとなり漫画家本人、さらにはディズニーが謝罪するに至りました。

 ディズニーは著作権の扱いが厳しいことで有名です。言い換えると、自社が展開するコンテンツに対して高い自尊心を持っている企業。その会社がステマに当たるような行為を漫画家に依頼していたというのは、俄(にわか)には信じられませんでした。

 アナ雪2ほどの作品であれば、ステマと指摘されるリスクがある手法を選ばなくても、普通に口コミされるのに、と思うのは私だけではないと思います。ただ、その直前に騒動になった京都府のステマ騒動にしても、広告投稿をユーザーに分かりにくい形で投稿してしまい、ステマと指摘されて炎上するケースが、なかなかなくならないのも実情です。

1人の声で“大炎上”

 まず、広告主や広告代理店の方々に認識していただきたいのは、今は非常に“炎上”しやすい時代になってしまったということです。1人が「これおかしくない?」と声を上げるだけで、大炎上につながった事例がたくさんあります。

 その一例が、17年のアサヒ飲料「三ツ矢サイダー」のCM。トランペットを吹いている女優の芳根京子さんの元に友達が駆け寄り、後ろからドンと押すシーンがありました。一見すると青春の1コマを描いた内容なのですが、あるトランペット奏者がこのCMを見てTwitterでそこに潜む危険性を指摘。これが広く拡散され、結果的に三ツ矢サイダーはCMの放映中止を決定したのです。

 まさに“個人発信からの炎上”という、象徴的な出来事でした。CMにかけたコストの大きさを考えると、アサヒ飲料の対応は英断だったと思います。私自身も、こんなことで炎上するなんてと驚いたのも事実ですが、1⼈の怒りや指摘によって企業がこのような選択を迫られる時代になっています。そんな環境にもかかわらず、広告を口コミに見せかけたいからとステマ的な手法を選択することには、リスクしかないと思います。

 私は昭和世代なので、それこそテレビCMなどの広告の世界は憧れの存在でした。しかし昨今はインターネット広告にノイズ的な広告が増えた影響もあり、アドブロックのアプリが人気になるなど、広告・宣伝行為そのものが嫌悪感を抱かれていることも事実です。そのため広告主の方々の心の中に「広告を広告として見せたくない」という矛盾した思いが生まれているように感じています。それが結果的にステマにつながってしまっているのです。

 こうした時代におけるマーケティングをどう考えていくのか――。これは私のように情報発信をしている人間にとっても大きなテーマです。個人的にポイントは3つあると考えています。

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